自分
「自分を信じろ。こう言うと自分なんか信じられないとか言う奴が出て来るが、ソイツには言ってない。「お前だから」言うんだ。お前のことなんか周りのほうがよっぽどわかってるぞ馬鹿者」
うん。きっとアイツならこう言うはずだ。
そして――
「暴君を信じるように、自分を信じてみろ!!」
ああ。そうするよ。
それは、そこで寝ている君が、ずっと昔に、不安そうにしていた俺に、言ってくれた言葉だから。
俺も、それを信じる。
しょせんイメージの世界。
だったら、信頼が力になるはずだ。
夜崩が出来ると思っているなら、それを信じるだけでいい。
出来るんだから、やるだけだ。
そう決めたら、夜崩の虚像が笑った。
そして、虚像は消えていく。
「行くぞおおおおおおおおおお夜崩えええええええええええええええええええっ!!」
全身全霊。心臓で糸を引くように、体全部で糸を持って行く!
もっと。もっと。もっと。
樹を引っ張ると思うから重く感じるんだ。
東京をひっくり返すくらいの、気合を込めればいいだけだ。
込める。力を。気合を。酸素を使え。血流を回せ。糖を消費しろ。
体の何もかもを使って、へし折れ!!
「いつまで無駄なことを!! 子どもは子どもらしく、膝を抱えて泣いていれば可愛げもありましょうに!!」
「うるさいだまれ!! v獣災害は俺たちのせいで起こったわけじゃない!! でも、ただ状況に文句を言うだけの道を選ばなかった!! 戦うことを選んだんだ!! 俺は、その道を全うする!! そしたら初めて、誇れる俺に――」
夜崩が見ているような俺に――
「な、なんですの!? 闘度は跳ね上がって……!?」
「なれるんだあああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
ばきっ
と、奥歯が砕ける音がした。
瞬間。
強烈な抵抗が、突然消えた。
入れすぎた力に、すっころぶ俺。
そのままごろごろと回転し、上下がひっくり返った無様な姿で、やっと止まった。
さかさまの視界で、上に向かって、臨界樹が落ちて行っていた。