幼馴染的信頼
「えっ」
「お世話は私の得意技です! こちらは私に任せてください! アキラちゃんは、自分の仕事に集中するんです!」
マンゴーの爆撃とメロン果汁のネットをかい潜りながら、三人が笑った。
「アンタどー見ても不器用っしょ。こっちはこっちで勝手にやるし」
「その通りや! さっきからチラチラこっちばっかり気にして、ちゃんとせんかい!!」
返す言葉もない。
これこそトロッコ問題そのものだ。
両取りしようとして悩んで、時間だけを浪費してしまっている。
棘抜長官にも言われたじゃないか。
決めろ、と。
だったら答えは決まり切っている。
信頼だ。
あちらにトロッコが行っても、彼女たちなら受け止める、と信じる。
だからもう向こうのことは考えない。
代わりに、俺は俺のやるべきことをやる。それだけを考える。
彼女たちを信頼して、任せきる。
その信頼こそが最大の集中を生む――
「……!」
それは、まさに夜崩がやっていることじゃないか。
この戦場の中、信頼しきって、爆睡している。
アイツは、これを教えるために、寝たんじゃないだろうか。
そうだ。
あれをやればいいんだ。
集中するなんて、漠然と考えているから、出来ないのだ。
ふと。
集中とは真逆なのだけど。
夜崩に意識があったらなんて言うだろうか。
そう思った。
それは容易にイメージできる。
糸なんかよりもっともっと正確に。
俺は誰より夜崩を観てきたんだから。
――うん、出来る。
激しく進んだv域化を追い風に。
思い出すように、イメージする。
その結果、イメージは結実した。
俺の目の前に現れたのは、夜崩。
そのイメージ。その投影。その虚像。
夜崩の虚像は、いつものように自信満々に笑う。