絶対王政的絶対信頼
「うそですっ!」
「いいえ。真実ですことよ。こちらもv7の一角が落とされましたが、そちらの突入部隊は全て撃退済です」
「そんな……」
夜崩を介抱しているふわりちゃんが絶望の声を漏らす。
だが、正直に言えばそれも予想していたことだ。
ヴァージン・ヴァレイのv値は18。もし殺界臨とやらを使えば倍。
それで棘抜長官の20を軽く超える32になる計算だ。
v7の五人がかりとすれば、とても勝ち目はないだろう。
事実、臨界樹附近で戦闘をしている様子はもうない。戦闘していれば、エフェクトがきらめくはずだが、それがない。
これは……詰んでるんじゃないか。
世界最強は負け、VTTの主力は壊滅状態。
五体満足なのは視界にある限りでは俺たちくらい……そして目の前にはv7……
背筋を冷たいものが走る。
「ニャハ……ハ。英雄になる……チャンスだな……」
だが、そんな俺の怯えを、夜崩の声が振り払った。
「夜崩!」
座るふわりちゃんに抱きかかえられて、赤子のように無防備な暴君は、それでも自信のこもった口調を崩さない。
「……セノとの戦い……見ておったぞ命人……あっぱれだ……」
「おい! 無理をするな!」
「……お前なら大丈夫だ……だから、暴君は「寝る」」
「え?」
言うや否や、夜崩はそのまま寝た。
本当に寝てる……。
すぴーすぴーって寝息立ててる……
抱いているふわりちゃんも呆然とするほどのスピードだった。
「オーホッホッホ! 絶望して不貞寝ですか。諦めが良いのはいいことです。勝てもしないのに抵抗する方が醜い。その子はよくわかっていますわ」
「逆だ」
「はい?」
「俺が勝てると「信じているから」寝たんだ」
こんなにも……こんなにも信頼してくれている。
戦場であんなに無防備で寝れるのは、俺の勝利を心の底から信頼しているからだ。
こんなものを見せられて、指をくわえていられたら、男じゃない!
「ホホホ! どうやって勝つというのです!!」
決まりきっている。
俺には一つのエフェクトしかないのだ。だから――
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
ありったけの糸をイメージし、それを臨界樹に結び付ける。
距離は関係ない。
視界にさえ入っていて、繋がることさえイメージできればいいのだ。
「何をしてらっしゃいますの!」
「あの樹を引き倒す」