殺界臨
カッと光ったかと思うと、大爆発が巻き起こった。
「夜崩!!」
「ニヒヒヒヒッ! ひっかかった!!」
くそっ! やはり罠か!
「てめえええっ!!」
「うろたえるな!!」
爆風を風が切り裂き、夜崩が飛び出した。
ふわりちゃんが爆発寸前に割り込み、なぎなたのエフェクトで爆風を吹き散らしていたのだ。
だが、ノーダメージとは言えない。ふわりちゃんは膝をつくが、しかし体から煙を吹きながら、それでも夜崩は止まらなかった。
「ばーか! ざーこ!」
セノが二丁拳銃を乱射する。瞬間、ワニやシカなど巨大なぬいぐるみと化した弾丸が、その弾丸の速度を以って夜崩に襲い掛かる。
だが、俺も指をくわえているわけじゃない。
ぬいぐるみに糸のイメージを繋げ、射かけ続ける。
やはり殺気の類を感知しているのか、ぬいぐるみが避けることはなく、矢が突き立つ。
その瞬間、爆発が起こ――らない。
くっ、任意で爆破できるのか!
「構わん! 勢いが落ちるだけ助かる! 続けよ!!」
背を向けたままで夜崩が叫ぶ。
戦闘の天才としか言えない幼なじみは、全く速度を落とさず、ぬいぐるみの弾幕をかわしていく。
「ざこのくせに!!」
ムキになってぬいぐるみを連射するセノ。
あるいは本当に精神年齢が低いのではないか。かわす際の至近距離で爆破されるほうがよほど脅威のはずだが、そこを攻める冷静さはないらしい。
加えて、俺の攻撃を読めるがゆえに、俺が狙うだけでかわす動作に入る。
つまり、簡単に隙を作れるのだ。
「己がはらわたの色を見るチャンスをやろう!!」
とてつもなく物騒なセリフと共に、夜崩の大鎌が一閃。セノを袈裟斬りにした。
「いたああああいっ!!」
しかしどんな頑丈さか、切り裂かれることはなく、しかし火炎のエフェクトがその身を苛んだ。
「いじめたああ!! こいつがいじめたああ!!」
泣き出したセノに、夜崩は持ち替えた鉄球を振り下ろす。
「泣けばより虐めたくなるのが暴君というものだ!!」
ふわりちゃんが聞いたら怒り出しそうだが、先ほどの爆風のダメージか、膝をついたままだ。
鉄球を十字に交差させた二丁拳銃で受け止めたセノの、目が真っ赤に輝く。
セノがぺろりと出した舌の上には、新緑の飴玉が乗っていた。
「もういいもん!! つかっちゃうもんね!! 【殺界臨】!!」
ガリッと飴玉を嚙み砕く音が響く。
瞬間、世界が変わった。