影
「はあっ!!」
その津波を切り払って止めたのは、箱雲丹さんのムチだった。
ムチの重力エフェクトが、津波を抑え込んだのだ。
箱雲丹さんは土埃にまみれ、服も乱れており、破壊された司令部テントから這い出してきたのだとわかる。
「おや、なかなかエレガントな方がいらしたわね」
「こいつは私に任せてください!」
箱雲丹さんのムチがヴァージン・ヴァレイの腕に巻き付く。
「あら? あなたの闘度……いえ貴方たちはv値って言うんでしたかしら。それ、13ってところでしょう? 私、18ありますのよ。相手になりませんわ」
まさかv7は視認しただけで相手のv値がわかるのか?
だが、18だと?
そんなもの長官以外の全員よりずっと強い――
「一人で戦うとは言っていません」
「え?」
次の瞬間、ジープが突っ込んで来てヴァージン・ヴァレイを轢いた。
「がふっ!?」
北川口さんの運転するジープはそのまま正面にヴァージン・ヴァレイを張り付けるように突っ切っていく。
ムチがその腕に巻き付いているので、箱雲丹さんも引っ張られてすっ飛んでいった。
それも計算の上だったようで、彼女はそのままボンネットの上に着地する。
「援護するぞ!!」
夜崩が鉄球を振り回し、走り出す。
それを、車上の箱雲丹さんがいつになく顔を歪めて制した。
「不要です!! こちらは私たちが引き受ける!! それより上に気を付けて下さい!!」
「上?」
滑走していくジープから上に視線を向けると、そこには小さな影があった。
「ニヒヒッ、やっと気づいた。でももうおそいけど」
降って来た言葉通り、高速で何かが飛来する。
それは弾丸。
「!?」
体を捻ってなんとかかわすが、次々に襲って来る。
「ニヒッニヒヒヒヒッ!! にげろにげろ!」