ヴァージン・ヴァレイ
「!?」
猛烈な衝撃波が巻き起こり、隊員たちや学生たちが吹っ飛ばされていく。
「はあっ!!」
夜崩の大鎌が、こちらに向かい来る衝撃波を真っ二つに引き裂いたおかげで、俺たちの小隊は傷一つ負うことがなかった。
だが、ざっと見渡しただけでも、ほとんどの人間が吹き飛ばされてしまっている。
そしてテントは粉々で四方に破片や機材が飛び散り、土煙が激しく舞い上がっていた。
あそこには、箱雲丹さんや羽田さんたち隊長もいたはずだ。
目を凝らすが、土煙を割いて現れたのは、スケール感が狂うほどの長身だった。
2メートルをゆうに超し、規格外にたわわな胸を持つ女性。
「ヴォルケーノ・ヴァンガードか!!」
俺の声が届いたのか、巨体がぴくりと反応する。
「誰が……ヴォルケーノですって?」
明らかに怒りの色を乗せたそれは、ヴォルケーノの声とは明らかに違う高い声だった。
あっと叫ぶ間もなく、瞬時に突っ込んで来たそいつに首を掴まれて持ち上げられていた。
「よく見なさいおちびさん。あんな粗野で粗暴で粗略な者と一緒にされるなんて許せませんわ」
純白のドレスを纏い、緑色の縦ロールの髪で、胸はスイカではなくメロンだった。網タイツも純白で、まるでマスクメロンの模様だ。
そんな観察の余裕は、首の締め付けで消えていく。
「かっ……はっ」
「私はヴァージン・ヴァレイ。麗しの貴婦人」
「自分で言うことか!!」
燃え盛る大鎌で斬りかかった夜崩に、ぽんと押し出すように俺を投げ出す。
「ぬっ!」
俺を受け取るために無防備になる夜崩。
「蛇崩さん!」
「手のかかるパイセンたち!!」
ふわりちゃんと梃子が左右から突っ込んでくる。
しかし、ヴァージン・ヴァレイは両手を払うだけで二人を吹っ飛ばした。
「きゃあっ!?」
「くっ!?」
両手の間からはオレンジの果汁らしきものが噴き出しており、それを散弾銃のように振りまいたようだ。
更にヴァージン・ヴァレイは両の掌の間からオレンジ色の糸を生み出し、それをあやとりのように動かしていた。
賽の目状に重なっていく糸。
「ほら東京タワーそっくりでしょう。ちなみに――」
それを地面に放つと、地面が賽の目状に切れていく。
「味もなかなかでしてよ」
その賽の目津波は俺と夜崩の方に向かって来る。
「くっ!」
夜崩は大鎌の斬撃で受けようとするが、炎では止まらない。
これはまずい――