開戦直前
VTTの行動は迅速だった。
志願した生徒を振り分け、小隊を作成し、1年は箱雲丹中隊、2年は羽田中隊――羽田さんはなんと前大阪支部長なのだそうだ――に配属した。
小隊と言っても四人一組の構成で、軍隊のそれより少人数だ。
この組み合わせは、戦闘訓練を見てきた戦教の独断で決められている。
俺は、夜崩とふわりちゃんと梃子との四人組となった。
他二人は慣れている者同士で組ませた方が良いのはわかるが、梃子については意外だ。
理由を聞いたところ、「一人だけ年下なので、もっとも戦闘力のあるチームに組み込んだ」ということだった。
なにしろ、夜崩はこの戦闘訓練の中でv値が11に到達しており、1年の中で圧倒的に強い。
中学生を混ぜるとしたらここというのは、なるほど筋が通っている。
「ニャハハハ。さしずめ全裸小隊じゃな」
夜崩が余計なことを言ったので地獄の空気になったが。
そんな地獄の空気ごと俺たちを詰め込んで、VTTの戦闘車両は都内を走る。
目的地は、芝公園。
そして攻撃目標は、東京タワー。
「嘘だろおい……」
だが、窓から見えたそれは、天を衝く巨大な大樹になっていた。大きく開いた枝は、街の上を覆い、芝大門の方まで影を落としている。
さながら、神話にある世界樹のようだった。
「ニャハハハハ。本能寺のように燃やしてくれるわ」
暴君は相変わらずぶれない。あれ信長が自分で火をつけたんじゃなかったか。
だが、あれを焼き払わないといけないのはその通りだ。
かつてない侵食との戦いが、いま始まる。