終わる
「……ん?」
気づいた時、俺は脱衣所に居た。
天井に張り付いている扇風機ですぐわかる。
ここは寮の風呂場だ。その長椅子に寝かされているのだ。
風呂場のドアがちゃんと閉まっていないのか、湯気が立ち込めている。
「なんでここに……?」
「気が付きましたか」
「おわぁ!?」
目の前に、全裸の箱雲丹さんが居た。
「そんなに驚くことはないでしょう。あれだけ汗をかいているのに放置していては風邪をひく。風呂場に連れて来るのは当然です」
「そ、そうじゃなくて……!」
「遠慮は無用です。早く脱ぎなさい。汗が引くと気化熱で体温を奪われます」
何を言ってるんだ何をしてるんだ何を……
まさか!
箱雲丹さん、俺を女だと思っているのでは!?
よく考えたら幼女の思い込みに対して、小学生を否定しただけで、女性であるという部分を否定していない!!
「だからそうじゃなくて俺はお――」
「そうか。力を使い果たして腕が上がらないのですね。言ったでしょう。強がるのは禁止だと。任せなさい」
「ちょっ、まっ」
すごい力で服を脱がせてくる。
抵抗しようにも力を使い果たしたのはその通りで。そもそもの体格差もありすぎて、まさに子どもと大人だ。
「俺はおと――」
「お手洗いは後で行ってください」
おトイレじゃない。男だって言いたいんだよ!!
「ぷわっ」
服を引き抜かれて全然喋れない。あっという間にパンツまでひっぺがされてしまう。
流石にこれで気づくかと思いきや――
「さぁ行きましょう。汗を流したらお手洗いに行っても構いませんよ」
なんで気づかないんだよ!
ついてるものはついてるんだぞ!?
そうか!? 風呂場でメガネを外してるから!? このモヤだから!?
あと俺が女だとしてもブラもいらないくらいの体格だからか!?
俺の手を強引に引っ張っていく箱雲丹さん。
男だと伝えようとしてもおトイレと聞き間違えられて会話にならない。
って言うか他の女子はいるのか?
居たら俺の人生が終わる――
「あ」




