訓練
「今日はここまでにしましょう」
「はぁはぁはぁ……」
誰も彼もが肩で息をしている。
体育館で行われた訓練も3日目。
徹底的に体力を鍛える基礎訓練と、箱雲丹さんや戦教との組手形式の訓練と、繰り返し繰り返し行われるデスマーチ。
連日の訓練で全身の筋肉が悲鳴を上げていた。
各部位の細かい痛みで、断裂した筋繊維の一本一本を知覚できるような気さえしてくる。
汗がとめどなく流れ、目があけにくい。酸素の欠乏で、指先に力が入らない。
参った……ここまで辛いとは。
「ニャハハハハハ!! レベルアップを肌で感じるぞ!! ゆかいゆかい!!」
相変わらずアイツは無茶苦茶元気だ。
どこからそんなパワーが出て来るんだよ。
「……フン、らくしょー、だし……」
梃子も本来中三とは思えない体力で張り合っている。
悔しいが、俺なんかよりよっぽど肉体的に強い。
あたりを見渡してみても、みんな疲れ切ってはいるが、俺ほどではないようだ。
この小学生のような体格が恨めしい。
「大丈夫ですか?」
そんな俺を見つけて、箱雲丹さんが近づいてきた。
「……大丈夫……です……はぁはぁはぁ……」
「強がる必要はありません。いえ、それは有害ですらあります。正確に自分の状態を伝えるのは部隊の安全に繋がる情報です」
ぐうの音も出ないとはこのことだ。
「……限界……です……」
それで緊張の糸が切れたのか、俺の意識はブラックアウトした。




