規格外
思わず声が漏れる。
情報の洪水に溺れそうになるが、数字がもたらす意味は明確だ。
恐るべき、敵。
実際、ヴァイス・ヴォイスの強さは想像を絶していた。
v値換算で15は妥当な数字だろう。
それが7人もいるのか……。
「なお、VTTの隊長はv値10以上が就任条件ですが、15以上は2人しかいません」
規格外の20ある長官を除くと、たった一人ということだ。
もう一人は、北川口さんだろうか。
長官がv7を追い詰めていたから手も足も出ずに死にかけたことすら忘れそうになるが、敵は文字通りの怪物なのだ。
そしてそれが7人もいる……。
「ここまで情報を公開したのには理由があります。単刀直入に言いましょう。みなさんにVTTは期待しています。精鋭として鍛え上げ、v7との戦いに備えたいのです。私たちも、敵も、君たちを戦力とみなしています」
率直に喋る箱雲丹先生だからこそ、真摯さが伝わる。
そうなのだ。
学校が襲撃された以上、俺たちはもう引き返すことは出来ない。
戦わなければ【神隠し】にされるだけなのだ。
「ニャハハハッ!! 面白くなってきた!!」
夜崩が肉食恐竜のような笑みを浮かべて、バキバキと拳を鳴らした。
いつだって、怖気づく俺の先に夜崩がいる。
コイツの無謀が俺に勇気をくれる。
それは俺だけじゃなく、クラスメートたちも同じだった。
「そうね……そうよね。蛇崩さんの言う通り。私も、頑張らないと」
ふわりちゃんも拳を握り、ふんすふんすと鼻を鳴らした。
「フン、日和りたい奴は日和ればいいし。どーせあーしが全部片づけるんだから」
どうやら、思っていた以上に、武闘派なクラスらしい。
俺もビビっている場合じゃない。
「やる気があるのは素晴らしいことです。なお、私の指導は理に適っていると自負していますが、厳しすぎると同僚から言われることがあります。ついて行けないと感じたらクラス異動を申し出てください」
その言葉が脅し文句でもなんでもなく、単に事実を告げているとわかったのは実際に訓練が始まってからだったが。