ヴァイス・ヴォイス・グランド・オーケストラ
刀を寝かせ、突きの構えを取る長官。
突きなら、奥まで攻撃は届く。脱皮で傷を消すのは困難だろう。冷静な判断だ。
繰り出された突きを嫌がるようにぴょんぴょん後ろに跳ねながら、ぶつぶつつぶやくヴァイス。明らかに警戒して距離を取る。
「……やだな……でもやらないわけにもいかないし……」
ヴァイスが五線譜を地面に突き刺した。
すると、周囲の木々が五線譜に変わっていった。
その数が尋常ではない。視界のほとんどが五線譜に埋め尽くされていく。
もはや五線譜の上に立っているのと同じだ。
v域化したものを、楽譜に変えてしまう能力ということか……!
「【ヴァイス・ヴォイス・グランド・オーケストラ】……!」
そして尋常ではない数の音符が、一斉に長官に襲い掛かった。
先ほどまでは、五線譜自体を切断することで攻撃を届かなくしていただけに、この量では防ぎようがない。斬ったところで、五線譜はいくらでもあるのだ。
「阿呆。滅茶苦茶に音符を飛ばしてどこがオーケストラじゃ」
長官は動じず、ただコートから刀を取り出すと、二刀流にした。
そして、目にも止まらぬ速さで、迫り来る音符を切り払っていく。
いや、「相殺」だ。
炎には炎を、雷には雷を、風には風を。
それぞれ同じエフェクトをぶつけて相殺している。
なぜわかるんだ。
四分音符や八分音符が流れて来るが、同じ音符でも発動するエフェクトが違う。
それを的確に迎撃できるのはなぜだ!?
「なんで……!? おかしいよ……!?」
「簡単じゃ。貴様の楽譜は、音階で効果を変え、音符の種類で威力を変えておる。休符だけが例外で、効果のないエフェクトをぶつけているのじゃろ」
「ヒェッ、バレてる……!?」
そういうことか!
ドレミでエフェクトが変わるのか!
だから、楽譜が読める長官には、どの攻撃が来ているのかわかるんだ!
「……だからって……あそこまで……正確に……」
「それが長官です」
俺のつぶやきに、隊員が食い気味に答えた。
この人がそれほどまでに尊崇するのもわかる。
360度を即座に判断しながら、エフェクトも切り替えて相殺し、かつ突き進んでいく。
それは英雄の行進だ。
「う、う~っ……こうなったら殺界臨を使うしか――」
ヴァイスが大技を仕掛けようとしたらしき構えをとった瞬間、拘束されていた夜崩がすぽんと抜け出した。
「ニャハハハ!! この機を待っていたぞ!!」




