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ヴォルケーノ・ヴァンガード

 動け。

 動けーーーっ!!

 どんなに命じても体は動かない。

 その時、視界の端、ジャングルの木々を押し潰し、何かが降って来た。

 その影は人間より一回り大きく。

 VTTが来た! おはぎくんだ!!

 そう思ったのは、俺の浅はかさだった。

「おい、いつまで手間取ってんだ」

「ご、ごめん……ヴォルケーノ・ヴァンガード……死んで詫びる……」

「死ぬんじゃねぇ」

 2メートル以上ある筋肉の塊の、女――ヴォルケーノ・ヴァンガードはその名前だろう。

 おそらくは、v7。

 ぼさぼさの緑髪に、スイカのような黒い縞。

 いや、スイカだ。

 下世話な話ではなく事実として、胸に大玉のスイカが丸ごと二つ載っている。

 セクシーさどうこうではなく、もはや女性型の重戦車だ。

 太ももの太さなど、俺が丸ごと入るレベル。

 生物として、死を直感する存在の圧。

「ったく、こんなことならオレもVTTの方に行きゃあよかったぜ」

「ヴォルケーノのくじ運じゃ……無理だよ……」

「るせっ」

 肉食獣が軽々しく会話しているような違和感。

 必死に体を動かそうとするが、重力のくびきは取れない。

「お、ソイツいい目してんじゃねえか。地面に這いつくばらされて、目が死んでねえ」

「フヒ、掘り出し物だよ……相当v値が高と思う……」

「へぇ。オレも戦いたかったぜ」

 バキバキと拳を鳴らす筋肉女――ヴォルケーノ。

「持って帰って一回戦ってみっか」

 そのまま俺の腰を掴むと、ひょいと持ち上げてしまった。

「あっ、ズルい……」

「別に手柄は取りゃしねぇよ。運んでやるって言ってんだ」

 重力はかかったままだというのに、まるでお構いなし。

 俺はちっとも動けないのに、なんて怪力だ。

 どうしたらいい。どうしたら事態をなんとかできる?

 コイツらはトマト野郎より、人間に遥かに近い。

 それはそのままv域の認識力とイメージ力の高さを示している。

 イメージ。

 そうイメージだ。俺がエフェクトを使えたなら、こんなことにはなっていない。

 炎ならどうだ。五線譜が葉から生まれたものなら、焼き尽くせる。

 だが、俺に炎のイメージは出来ない。

 親族を火事で失って以来、炎の正確なイメージを脳が拒む。爆発も同じだ。

 風や水のように形をイメージしにくいものも、俺には向いていない。

 あれは感覚的に掴める人間にしか出来ない。俺は理屈っぽすぎる。

 極めつけが重力だ。ヒッグス粒子がどうのなど考えている奴にはイメージできない。

 見えない何かが、当たり前にものを押さえつけるとイメージできるかどうかだ。

 必ずしも現実の物理法則とイコールである必要はないのだ。

 形あるもの、イメージ。エフェクト。

 氷。水よりイメージが出来るし、過去つたないながらも試したことがあるが、弓矢との相性が良くない。

 氷のエフェクトを矢にまとわせると、視覚的に重さを感じるせいで違和感が凄まじく、命中率が極端に下がる。

 命中した瞬間にエフェクトを発生させるのは相当にイメージ力がいる。

 誰もが夜崩のように着弾時に雷を炸裂させることは出来ないのだ。

 駄目だ。有効なエフェクトが思い浮かばない。

 この俺の貧弱なイメージ力が、この事態を招いたと言うのに……!!

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