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数値開示

「あっ」

 ピピッと音がして、あっさりと胸のバッジに表示された。

 俺のv値は――5。

 これは高いんだろうか?

「あら」

 背後のふわりちゃんの声に、ついそちらを向いてしまう。

「私は7みたいです」

 7。俺より、上だ。

「す、すごいじゃん」

「そ、そうでしょうか」

 謙遜されると、それより低い俺の立つ瀬がない。

 そんな俺の肩をちょいちょいと触る指があった。

 振り向くと、満面の笑み。暴君スマイル。

「ニャハハハ、見よ!」

 自慢げに突き出された手の中には、10と表示されたバッジ。

「10!?」

 思わず声が出た。

「ほう、10か。学生としては破格の数字じゃな」

 長官も反応する。その声に感心の色がはっきり出ていた。

「学生であれば、よくて7。多くが4から5程度じゃろうからな」

 そうなのか。

 じゃあ、俺は平均くらいってことか。それを考えると、ふわりちゃんも凄いな。

 v値は教科書で習ったことはあるが、取り扱い方によってはイジメに繋がりかねない情報だけに、中学では測定自体がなく、普通は3年次に行われるものとされる。

 それをいきなり全校に開示すること自体、長官の危機感を感じさせた。

「ニャハハハハハ……と笑いたいところだが、紗々璃ちゃんよ。お主は一体いくつなのだ?」

「余か? 余は20だ」

「!?」

 生徒たちが驚愕で息を飲む。

 俺の4倍……夜崩ですら倍。

「なるほど、噂の通りだ」

 夜崩が顎に手を当て、まるで名探偵のような雰囲気を醸し出す。

 そして長官を指差し、言った。

「棘抜紗々璃こそ日本一のビッチだと!」

「誰が日本一のビッチじゃ!! v値じゃ!!」

 そう言う長官は、いまだに胸丸出しだった。

 ボタンちぎっちゃったしね……残念ながら説得力というものが、皆無だった。

「繰り返すがv値はあくまで目安じゃ。経験を積めば高まっていく。一方でリスクもある。v域の観測能力の高さは、襲撃確率の高さでもある」

 その言葉にざわつく生徒たち。

「うろたえるでない!!」

 その動揺を、長官の一声が沈めた。

「くっ、暴君(ボク)が言いたいセリフベスト10を先に言われた!」

 一人うるさいままの奴はいた。

「これを言うと、凡人はv値の高い人間を隔離しろなどと言い出す。じゃが、その意味はない。なぜなら、v値の高さは戦闘力の高さ。v獣発生確率がごくわずかに上がることと、v獣発生時の生存確率のアップは後者の方が統計的にも遥かに有用じゃ。逆に言えば、v値の高い人間には戦闘での貢献が強く求められる」

 いま、長官は夜崩を見たか?

「ニャハハ」

 軽くうなずく夜崩。

 わかってるのか? いや、わかってるんだろうな。

 コイツはそういう奴だ。暴君としてふるまう癖に、勉強も出来るし頭も回る。

 ステータスのポイントの振り分けを能力に全振りしてる感じだ。代わりに人間関係のポンコツ度が高まっているが。

「いまロックを外したゆえ、以後、vのロゴを押せば表示されるようになる。そうそう上昇はせぬが、たまに確認して成長を確認するとよいじゃろう」

 なるほど、確かにv学校章のvの字が押せて表示をオンオフできるようだ。

 自分で成果を確認できるわけだから、恐ろしくもあるが、やりがいにもなりそうだ。

「早う強くなれ。ほとんどの者は二十歳ごろに上がりを迎える。VTTとして戦えるのは数年じゃ。戦闘力が完成されていれば、すぐにでもスカウトするぞ」

「つまり暴君(ボク)が欲しいということかな!」

「蛇崩、おぬしは即戦力レベルだが、協調性が無さ過ぎる。お前はもっと学校生活を楽しめ。人と交流せよ。さすればもっと強くなる。というか、そこの幼女に甘え過ぎじゃおぬしは」

「なぬっ!?」

「幼女じゃないんですが!」

「そうじゃな、悪かった。高校生じゃものな。お姉さんじゃ」

「そういう意味じゃないんですけど!」

 結局、いくら説明してもわかってはもらえなかった。

 なんか中二病をこじらせて自分が男だと言い張ってる奴だと思われた。

 ともかく、長官による怒涛の訓練は終了した。

 非常にハードだったこともあり、誰しもが実戦の恐ろしさを理解したに違いない。何しろ判断を誤れば交通事故かのように吹っ飛ばされ、頼りにしていた味方はなぎ倒される。

 何より、判断ミスで自分ではなく友人が餌食となるのだ。

 最後まで立っていた面々を見ても、ほとんどが2年3年だ。それでも全員ではないし、半数くらいか。

 ざっと見たところ、一年は夜崩はもちろん、ふわりちゃん、あとはエスカレーター組が10人くらいに……ん?

 ひと際目を引く人物がいた。

 頭を緑と青に染め分けた二つ結び――いわゆるツインテールで、小柄な少女。

 2年や3年ではないと思うが、1年の中にも見覚えはない。

 手には釘バットを持っていた。あんなv器もあるのか……

 こんな目立つ生徒が居たら覚えているだろうから、転校生なのかもしれない。

 視線が合った瞬間、顔を背けられてしまった。

 謎だ……が、v学の生徒である以上、いずれはわかることだろう。

 少なくとも、いま残っている以上、ただものではないだろう……

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