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迷宮入り

 登校――と言っても寮は学校敷地内なので2、3分だが――し、教室へ。

 いつもは俺より先に来ている九介の姿はない。

 まさかとは思うが、まだ水風呂にいたりしないよな……

 そんなことを考えていると、夜崩が登校してきた。

「おはよう諸君」

「おはよう。相変わらず朝からラスボスめいてるな」

「そう褒めるな……! このっ、ういやつよ」

 褒めてはないが、顔を真っ赤にして照れるとは思っていなかった。

 が、そんなことより問い詰めないといけないことがある。

「お前、なんでキスマークだらけなんかにしやがった! おかげで風呂場で大騒ぎになったんだぞ!!」

「キスマークだらけ? 何を言っている? そこまでの褒美を取らせるわけがなかろう。下賜してやったのはひとつだけだ」

「は?」

 ひとつ、だけ?

 じゃあ、他は?

 風呂場の鏡で見た、体中のあちこちについたそれは?

「……待て。貴様、いまキスマークだらけなのか?」

「え、あ、いや」

 しまった。やばい。

「おい、誰にやらせたんだ」

 夜崩の目が、獲物を横取りされた猛獣のように怒りに燃えていた。

「こ、こっちだって知りたいわ!!」

「貴様は暴君(ボク)の所有物だぞ!! 誰がそんなふざけた真似をした!!」

「誰が所有物だ!! 椅子扱いしやがって!!」

「馬鹿め! それは気分による!! 基本は愛玩用の下僕だ!!」

「人を愛玩用にしてんじゃねえ!!」

「誰だ……!! 暴君(ボク)のものに手を出した不届き者は!! 八つ裂きにして車裂きにして石抱きにしてやる!!」

「話聞けよ!! あとどんな順番の刑だそれは!!」

 こちらの意見などお構いなしに怒り狂う暴君。

 犯人探しとばかりに教室を飛び出して行ってしまった。

 荒れに荒れた暴君とは対照的に、俺は背筋に冷たいものを感じて立ち尽くしていた。

 本当に誰だ……?

 寮は外部からの侵入にはセキュリティが非常に厳しいが、逆に内部はザルだ。

 そして男子寮と女子寮は寮長の部屋の前を通る形で連絡通路がある。

 夜崩のように侵入することも不可能ではない。

 とはいえ、ふらちな輩が侵入できないよう、どちらの寮も部屋には鍵がついている。

 俺の部屋だけは、一人部屋なのでv獣発生時危険という理由で鍵が解除されているが。

 ……釈然としないが、とにかく、俺の部屋なら内部の人間が誰でも入れるわけだ。

 マジで誰だ……怖すぎる……。

 そもそも男か女かもわからないし……。

「おはようございます」

 怯えているところに、春風のように優しい声が降ってきた。

 振り返るとそこにいたのは、ふわりちゃんであった。

「お、おはよう」

「どうしたんですか、顔色が悪いですけど……」

「そ、そう?」

 動揺が顔に出ているのかもしれない。

「ちょっと昨日は部屋に侵入者が出たみたいで……」

「まぁ! それは怖いでしょう!」

「そうなんだよ。でも、考えてみたら学内の人間しか入れないんだし、単なるいたずらのために侵入してきたのかも……」

「でもそんな人は見なかったですけど……」

「そうだよなー。心当たりがないもんな……」

「心配なら、一緒に寝ましょうか? 私、子守歌も得意なんです」

「だから俺は幼女じゃないってば!!」

「あらあら」

 あらあらとか言う実在の人物初めて見た。

 ……全く、俺の周りは変わり者ばかりだ。

 何か今の会話、引っかかったけど短期記憶は忘却の彼方だ。

 違和感だけが残った。

 結局、キスマーク事件の犯人は見つからなかった。

 何だったんだろう……

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