9 村の防衛
長い未更新を経て帰ってまいりました......
誠に申し訳ございませんでした!!(_;´꒳`;):_
リスタートしますので、何卒よろしくお願いいたします!!
何か感想やアドバイスがあれば、どんどんお願いします!
「よぉ、坊主。もしかして手伝ってくれんのかい?」
急いで、魔獣のもとに向かっている最中、ある男性に話しかけられた。
この人は確か......
さっき、村長さんに話しかけていた人だ。
「はい! 村を守ろうとする皆さんの姿を見ていたら、何もせずにはいられませんでしたから」
「そうか。ありがとな。皆この村が好きだから、絶対に守りてぇーんだ。」
あんな住民一丸となっている場面を見れば、皆んながこの村を本当に好いていることは、一目瞭然だった。
だからこそ、協力したくなったわけで......
「はい。皆さんを見ていたら、それは十分伝わってきましたよ」
「おっ。そうか、それは照れるな......まぁ、そんなわけで力を貸してくれや。頼むぜ」
「任せてください!」
男性はそう言って、俺の元から離れていった。
「任せてください!」とは言ったものの、俺の心の中は不安だらけだ。
俺がこの剣一本でどれほど貢献できるのかは分からないし、魔獣とも戦ったことがないので、どう戦えばいいのかも分からない。
正直、根性でどうにかするしかない。
でも、別に俺一人で戦わなくてもいいのだ。
魔獣を撃退できればいい話で、周りの人達と協力してどうにかしよう。
「よし!」
両手で頰を叩き、気合を入れ直す。
魔獣らしき生物が見えて来た。
その存在を確認した俺たちは、走るスピードをさらに上げて魔獣に近づいていったーー
村の入り口に到着するとソイツらはすぐに見えてきた。
四本の足を交互に動かし、地を這ってこちらに歩いてくる生き物が3匹。
茶色い表皮にやや長い尻尾、その姿はまさしくトカゲ。
そんな目の前にいるコイツらの名前は、ブラウンサラマンダー。
今俺が着ている外套の素材にもなっている正真正銘の魔獣だ。
村の人たちは静かに闘争心を燃やしているようで、空気は這り詰めている。
「よいか、皆の衆。わしらの元に危険をもたらしたこやつらに目にもの見せてやるがよい!! ただし、ケガ一つすることもわしは許さんからな。よいな!!」
「「「「おう!!!!」」」
村長さんはやや怒気の入った言葉で、仲間たちに喝をいれた。
それに、仲間たちが盛大な声で答え、やる気を滾らせる。
魔獣を前にしてもビクビクしている人は一人もおらず、目の前の敵を今すぐ狩らんと躍起になっている。
その光景はもはや、戦いに向かう本物の武人そのものである。
「ほ、本当に守り人は一人だけなんですかねぇ......」
あまりの光景に俺は一人ごちる。
こんな光景を見れば、誰でもそう思うはずだ。
思わずこっちが委縮してしまいそうになるのだから。
周りを見ると、日はもう沈みかけている。
夜は魔獣に有利な環境であり、周囲が見えにくくなってしまうので、早めに決着をつけたいところだ。
「......よし! 行くか!」
俺は小さな深呼吸をして、目の前の魔獣のもとに向かう。
さぁ、今までの俺の努力の成果を見せてやろう。
生まれて初めて戦う魔獣。
不安や恐怖はもちろんまだある。
だが、先ほどまでではなかった。
いざ相手を前にすると今の自分がどれだけ通用するのか、どこまでやれるのかといった好奇心が勝ってしまっているのだ。
鞘から銀色の剣を抜き、俺はついにブラウンサラマンダーと対峙した。
横には村の男たちがズラッと並んでいる。
皆、視線を真剣にブラウンサラマンダーへと向けて、武器を構える。
辺りが暗くなっているのも相まって、空気が張り詰める中、村長さんが大きく息を吸った。
「皆、かかれぇ!!」
「「「「よしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」」」」
村長さんの大声を合図に、俺を合わせて合計十二人の男たちが四人ずつに分かれて、前にいる三体の魔獣に突撃する。
すると、押し寄せる足音と声に反応して、ブラウンサラマンダーが鳴き返してくる。
間合いに入った瞬間に俺はさっそく、ブラウンサラマンダーに剣を振るう。
しかし、硬い尻尾で受け止められて、すぐに振り払われてしまう。
「くっ......」
そのまま後ろに投げ出された俺は、受け身をとって態勢を整える。
その間に村の人たちが、攻撃をくらわせようと三人同時に詰め寄る。
「これでっ!」
「シャァァァァ」
高い鳴き声とともに、ブラウンサラマンダーは体を高速で回転させる。
そうすることで、尻尾を振り回して三人の攻撃をまとめて振り払った。
「強いな。いくら低位の魔獣といえども、魔獣はやっぱり魔獣ってことか......」
低位の魔獣でもここまでの攻撃と防御をしてくるのだ。
これが上位の魔物だったらと想像すると、ゾッとしてしまう。
「でも相手は今のブラウンサラマンダーだ。打つ手ならある。」
謎の感覚を調べるために読みまくっていた書物の数々。
その中には魔獣に関する本もあって、低位の魔獣であれば魔獣の種類から生態まで様々な情報が載っていた。
もちろん、魔獣の弱点も......
あらかじめ村の人たちとの情報の共有は済んでいるので、あとはどうやってその弱点を突くかで勝負は決まる。
そうこう考えている内に、ブラウンサラマンダーが勢いよく突進してくる。
「はっ!」
正眼の構えをしていた俺は、それを横に飛ぶことで回避し、そのまま胴体を切りつける。
いくら硬い表皮をもつブラウンサラマンダーでも、限度はあるので傷をつけることに成功する。
修業の成果が少し出たようで、戦闘中だというのに嬉しくなってしまった。
「シャァァァァァ!!」
傷をつけられたことで、完全に怒ったブラウンサラマンダーは暴れ回り、俺たちに攻撃しようと突進してくる。
それも躱して、またしても胴体を切りつける。
傷をつけても攻撃をやめないブラウンサラマンダーは次々と他の三人に突進していく。
だが、他の三人も反撃までは出来なくとも回避は造作もないようで、かすり傷一つ負っていない。
暴れつくした茶色い魔獣は少し離れたところで停止し、俺たちと距離をとった。
流石に疲れたのだろう。
尻尾が垂れ下がっているので、当たりだと思う。
この間に攻撃してもいいんだけど、防御ぐらいはできるだろうから、こちらの体力も考えて無駄足を踏むことはしたくない。
なので、今のうちに打開案を考えることにする。
他のグループもまだ討伐できていないようで、多くの声が響いている。
「おい、坊主。こっからどうするよ?」
さっきの男性が話しかけてきた。
「ん~。どうですかね。尻尾の付け根さえ切り落とせれば、いいんですけど......」
そう。
ブラウンサラマンダーは尻尾の付け根が弱点。
そこを切り落とすと、途端に動きが鈍くなって容易に討伐できるのだ。
「怒り......突進......回避が容易......」
情報を唱えながら、頭の中で並べていく。
(怒ると突進してくるっと。回避が容易なのは、攻撃が単純に突進っていう安直な方法しかないからであって......)
「あっ! 分かりました。では、こうしてみましょう」
俺は思いついた作戦を村の人たちに伝える。
「いいと思うぜ。それでいこう」
伝え終わるとすぐに、おじさんが口を開いた。
他の二人も頷いてくれて、この作戦で行くことが決定する。
「じゃあ、もう一回行きましょう!」
俺たちは再び魔獣の方へと向き、先ほどと同じように突撃する。
だが、今回は少し違う。
攻撃を加えずに俺たちは、ブラウンサラマンダーの周りを駆け回る。
ひたすら駆け回り、駆け回り続ける。
すると、俺たちの動きを目で追っていた茶色い魔獣は、ついに痺れを切らして動き出そうとする。
「ほっ」
すかさず、俺は手に持っていた砂を投げつけ、完全に攻撃の目標を自分に向ける。
「シャァァァァ!!!!」
砂を浴びた茶色い魔獣は、ギロリをこちらに目を向けて、大きな鳴き声とともに今日一番の怒りをあらわにした。
怒り狂った魔獣は、俺へと強烈な突撃をしようとものすごい勢いで向かってくる。
しかし......
「「「オラぁ!!」」」
大声とともに俺とブラウンサラマンダーの間に割って入る影が三つ。
他の三人が回り込んで、攻撃を防いだのだ。
(砂を投げたタイミングで、俺の元に来て攻撃を防いでくれるように頼んでおいたからな。)
攻撃は三人によって完全に受け止められ、その反動で魔獣は跳ね返される。
三人の力に対して、一体のただの突進で挑んだのだから当然だ。
唐突に跳ね返されたことで、不意を突かれ、態勢を崩したブラウンサラマンダーは何も出来なくなる。
「尻尾はいただくぞっ!! はっ!」
その隙に俺は三人の横をすり抜け、勢いそのままに尻尾の付け根へと剣を振るう。
「ギシャァァァァ!!!!」
尻尾を切り落とされたブラウンサラマンダーは、大きな悲鳴をあげながら後ろに飛び退いた。
だが、尻尾を切り落とされたことで動きは鈍くなっており、もはや焦る必要はなかった。
一気に間合いを詰めて、動きの鈍くなったブラウンサラマンダーに止めの斬撃を叩き込む。
すると、目の前の魔獣は動かなくなり、力なく地面に倒れた。
「ふぅ~。終わったぁ~」
初めての魔獣との戦いが終了。
俺は剣を鞘に納めながら、一息つく。
周りを見ると、丁度他のグルーブも決着が着きそうで、救援はいらなそうだ。
「お疲れさん、坊主」
斧を肩に担ぎながら、男性が話しかけてきた。
「はい。皆さんもお疲れ様でした。協力していただいてありがとうございました」
「いいってことよ。俺たちは村が守れるならそれでいいんだからよ!」
俺の言葉に男性は笑顔で返事をしながら、頭をワシャワシャと撫でてくる。
悪い気はしないので、為されるがままにされる。
「っと、まぁとにかくありがとな坊主。お前がいてくれたから倒せたんだ」
「いえいえ。皆さんの頑張りの結果ですよ」
そう言った瞬間、ブラウンサラマンダーの討伐がすべて完了したようで、村長さんが終了の合図を出した。
男性はその合図にニヤリとしながら、再びこちらに振り向いて言った。
「んな、謙虚になんなくていいんだよ。感謝は素直に受け取っとけ」
頭を撫でるのをやめて、男性は微笑みながら俺の頭を後ろに押した。
「......はい」
少し間をおいてから、俺は晴れやかな笑顔で返事をする。
「そうそう。それでいいんだよ」と笑いながら、おじさんは仲間の方へと去っていった。
そっか。
倒したんだよな俺が。魔獣を。
全く実感がない。
初めての魔獣、初めての経験だったというのにここまで実感が生まれないものなのだろうか。
ただ単純に実感が湧かないのならいいのだが、これが例の謎の感覚からなっているものだとしたら......
気になる。
だが、確かめる手段はない。
正直、自分自身の感情が分からないのは情けないが、こればっかりは仕方がない。
それを解決するために旅に出たわけだしな。
「お~い、皆の衆、辺りが真っ暗になる前に、そろそろ村に戻るぞい」
村長さんの声が聞こえる。
その声を聞いて、俺は顔を上げて村長さんの元へと向かう。
何はともあれ、この村を守れてよかった。
俺は安堵しながら、村の人たちが集まる集団に戻っていった。
フィオ覚醒まで、あとニ、三話だと思うのです。
その後は学園編へ突入する予定です!
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