6 出発
更新が遅くなってしまいました......
大変申し訳ございません(>_<)
感想とかあれば、どんどんお願いします!
家を出た俺は、まず今晩を乗り越えるために近くのケルンという町に来ていた。
このケルンという町は、公爵家本家に一番近い町ということでいつも大きな賑わいを見せている。
今は夜ということで、いつもよりも人出は少ないが、光の魔道具によって街道が照らされ、飲食店にはまだ残っている客もいた。
酒を飲んで盛り上がっている。
そんな光景を見ながら、俺は着ていた服のフードを目深にかぶり、宿を探した。
無能と言われるようになってから、あまり外に連れ出されることがなくなったとはいえ、俺は公爵家の次男だったのでそれなりに顔は知れ渡っている。
流石に俺の追放がもう知れ渡っていることはないだろう。
だが、こんな時間に公爵家の次男が歩き回っているのを目撃されれば、面倒ごとになりかねないので、俺は正体がバレないようにひっそりと宿を探し続けたーー
「ふぅ~。やっと泊まれそうな宿を見つけた。流石はケルン。宿もいっぱいだな」
やっとの思いで見つけた宿の受付で俺は、一息ついた。
ここにたどり着くまでに多くの宿を訪ねたが、多くの旅人や観光客がいて全く部屋が空いていなかったのだ。
ここにたどり着くまでにだいぶ時間を使ってしまったので、すっかり体が冷えてしまっていた。
冷たくなった手に息を吹きかけていると、受付の奥から宿主の女性が小走りでこちらに来た。
「待たせて悪いね。はいよ。これが部屋の鍵。朝食は10時までだから気を付けるようにね」
そういって宿主の女性は、部屋の鍵を渡してくれた。
はやく部屋に行って、休むことにしよう。
俺は明日から本格的にムーランに向かうが、極力正体を隠しながら行きたいので、理由もなく多くの人が乗る馬車を使うことは出来ない。
それを考えると、明日からは徒歩でムーランまで行くことになるので、しっかり体を休めないといけない。
「ふぁ~。眠い。今日は事が事だけに疲れたな。これからのことは明日考えることにして、とりあえず寝よう」
部屋に入って、気を抜いた瞬間に疲れがドッと襲ってきた。
今日は追放によって、いろいろな感情になっていたから思った以上に精神が限界を迎えていたようだ。
ムーランまでの旅路。これからのこと。
そしてーー謎の感覚のこと。
不安や心配になることは多くあるが、明日からのこともあるし、今日は眠ることにする。
そのままベッドに飛び込んだ俺は、すぐに深い眠りについた。
**
翌朝。
朝食を食べ終えた俺は、ムーランに向かうためにケルンの街を出ようと門に向かっていた。
夜とは違って、朝は多くの人が道を行きかいしている。
道に真ん中には馬車が通り、道の横には様々なお店が建てられている。
これこそが、ケルンだと言わしめるのに十分な光景が広がっていた。
そんな街並みを見ながら歩いているとふと思い出した。
「そういえば、途中で魔獣に出くわす可能性があるか......武器が必要だな」
ムーランに向かう途中で、魔獣に遭遇する可能性は大いにある。
実際に町を行きかいしている商人たちが度々遭遇しているのだ。
道は人里よりに作られているので、強い魔獣はでないにしろ魔獣は魔獣。
武器を持っていなければ、ただやられるだけ。
今までは町を出たときは、護衛付きの馬車に乗っていたので、こんな大事なことを失念してしまっていた。
思い出せてよかった。
これからは一人で生きていかなければならないのだから、しっかりしないといけないな。
気を取り直して、門に向かう前に武器屋に向かうことにする。
すると、歩いてすぐのところに武器屋があった。
そのまま武器屋に入る。
店の中には、杖や剣、盾に防具まで多くの武具があった。
俺は迷うことなく、剣の売り場へと足を向ける。
剣がまだ十分に扱えないとはいえ、魔法が使い物にならない俺にとって、今戦える手段があるとしたら剣しかないのだ。
「品質を求めすぎて、高値のものを買ってもお金が無くなってしまう。かといって、安価なものを買ってすぐに壊れるようなものでは意味がないな......」
置いてある剣を見渡しながら、選ぶ上での要点を考え、確認していく。
「......よし。これにするか。予算的にも大丈夫そうだし、品質も悪くなさそうだ」
立てかけてあった鋼の剣に目を付け、手に取る。
想定していた剣の値段よりも少し安いぐらいで、刀身も輝いていて、しっかり鍛え上げられているのが素人の俺でもわかる。
最低でもムーランに着くまで、壊れないでくれればいいと思っていたので、この剣であれば十分だろう。
「あとは、簡単な防具が欲しいな......安全性を高めるだけ高めておくことに越したことはないし」
防具を身に着けているだけで、死の可能性を低くできるのであれば、買っておくべきだ。
ただ、徒歩で行動する上に正体もなるべく隠して動きたいので、動きやすくて、顔も見えにくいような防具が欲しい。
そうなると......
防具のエリアを一通り見て回る。
ーー結果、俺はブラウンサラマンダーの皮で作られたフード付きの外套を選んだ。
ブラウンサラマンダーは、この地域の近くに生息している魔獣だ。
ブラウンサラマンダーの皮は、硬さと伸縮性があって、よく防具の原料になっている。
そのため、動きやすさを求めている俺にとって、ちょうどよかったのだ。
それにフードもついているので、今まで通り目深にかぶっていれば、正体がバレることもないだろう。
「これで、準備は大丈夫だな。一応これらの品質を店主さんに確認しておくか。」
大丈夫だとは思うが、俺は素人なので一応プロの話も聞いておいた方がいいだろう。
目的の剣と防具を手に持った俺はそれらを購入するべく、会計に向かった。
**
武器屋を後にした俺は、現在ケルンの門の前にいた。
茶色い外套を身にまとって、腰には鋼の剣を下げている。
先ほど、武器屋の店主さんにも品質を確認してお墨付きをもらった外套と剣だ。
そして、野宿が出来るように野営の準備と非常食を入れた背負えるくらいの革袋を持っていた。
これらは、銅貨10枚では準備できなかった品々だ。
グラン爺からプラスで銀貨をもらえていなければ、今頃ろくな準備も出来ずに、野垂れ死んでいたかもしれない。
(ありがとう、グラン爺)
改めて、心の中で感謝をしておく。
じゃあ、出発するか......
しっかりとフードを目深に被り、正体がバレないように整える。
この門を出れば、いつ魔獣と遭遇するかもわからない。
それこそ、命の保証なんて全くない世界だ。
歩いている最中にいきなり魔獣に襲われて命を落とすかもしれないし、山賊や追剥に襲われて殺されてしまうかもしれない。
これからは、本当にいつどこで死ぬかもわからないのだ。
だが......
今、俺の胸の中から強く訴えかけられているのだ。
ーー外に行け。 と。
この感覚は、実は門へ向かうたびに強くなっていっていた。
どんどんどんどん強くなっていって、気づけば、無視できないほどにそんな感覚が強くなっていた。
俺の胸の奥の謎の感覚が、明確に俺に訴えかけている。
まるで、何かを探し求めるかのように。
やはり、外にこの謎の感覚の答えがあるのだ。
外に行かなければ、正体にはたどり着けないのだろう。
それならば、行くしかない。
ーーそれに、俺には再会しなければならない人たちがいる。
だから、死ぬわけにはいかないのだ。
剣の修業も中途半端で心配なことは多くあるが、俺の目的のため絶対に生き抜いていく。
謎の感覚の正体を突き止める。
また、リエラ達と再会する。
この2つの決意を胸に、俺は外への第一歩を踏み出した。
ちなみに、フィオの覚醒は間もなくです\( ˙꒳˙ \三/ ˙꒳˙)/
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