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1 少年の始まり

新しく始めました。

何か感想とかアドバイスとかあれば、よろしくお願いします!

この世界に神はいない。

唐突にこんなことを言われれば、どうしてそんなことが分かるのかと疑問に思うだろう。


理由は単純明快、こう語り継がれているからだ。


ーー神々は遥か太古の時代に最後の大戦”神々の終焉(ラグナロク)”を勃発させ、想像を絶する戦いの末、力尽きたーーと。


これは全世界共通で伝承として語り継がれている。

人族、エルフ、ドワーフ、獣人族、そして魔族にいたるまで。


この話を知らないという人はどこにもいないだろう。

たとえいたとしても探すのは困難を極める。

それほどこの伝承は根強く広がり続けているのだ。


だが、この伝承に疑問を持つ人たちがいる。

当然だ。神がいないことを実際に確認できていないのだから。


果たして本当に神はいないのか。

そもそも神々の終焉(ラグナロク)は本当に起きたのか。

いつの間にかでっち上げられた作り話なのではないか。


賛否両論、様々な意見が今も世界を駆け巡っている。


神の不在を肯定する側としては、魔族の存在が大きい。

魔族は、これまで幾度となく人類に被害を与え、悲劇を生み出してきた。


そんな魔族の存在を理由に

(神々が存在しているのなら、このような悪しき存在を残しておくはずがない)

(つまり、魔族がいるということは神はいないということだ)

という意見があり、その立場を一向に譲ろうとはしない。


否定側としては、魔法の存在が大きい。

(この世界には魔法という神の御業ともいうべき奇跡が体現されている。もし神々がいなければ、こんな奇跡を起こせるはずがない)


魔力に満ちているこの世界”ユースフォリア”では魔法が使われ、神聖視されている。


何もないところから炎、水、風などを起こすのだから神聖視されるのは当然と言えば当然だ。


神聖視されると同時に、魔法は価値基準の支柱にすらなっているのだが、それはまた別の話だ。


とにかく、否定側もその立場を一向に譲ろうはしない。


そんなこんなで議論が続いているわけだが...



俺は、この神々の話に妙な引っかかりを覚えていた。

何故なのかはよく分かっている。


それは、俺が昔から抱き続けている使()()()に似た感覚がこの神々の話をつかんで離さないことだ。


この使命感のような謎の感覚は、俺が昔から忘れようとしても忘れられないものだ。


この感覚はいつからなのか。

物心ついた頃からな気もするし、もっと前からな気もする。全然わからない。


この感覚はなんなのか。

俺は何かをしなければいけない気がするが、その”何か”が全然わからない。


自分でも馬鹿馬鹿しいと思う。


ただの空想ではないのか。勘違いではないのか。

何度、そう思ったことか。


だが、この感覚が毎日のように俺の胸の奥を思い出せと言わんばかりにかき乱しているのは紛れもない事実だった。


そしてこの謎の使命感が俺の胸の奥で神々の話を残し続けている。


何か関係あるのだろうか? と疑念を感じずにはいられないが、たかだか13年しか生きていない俺の感覚を遥か太古の話と結びつけるのは無理がある。


だが、現実性がないこの疑念は、忘れてもいいはずなのにずっと俺の中に残り続けている。


そんな疑念を無視して、月日はそよ吹く風のように流れていくのだった。




**

公爵家の次男として生まれた俺ことフィオ・オルデリンは幼くして膨大な魔力を持って生まれた。


膨大な魔力を持っていた俺は周りからなにかと天才だともてはやされ、両親からは未来の大魔法士になる存在だと大きく期待されていた。


加えて、俺は”回帰(リグレス)”という固有魔法を持っていた。


固有魔法とは、汎用的なものではなく、その人個人に与えられた魔法だ。


固有魔法は他者が使用することはできず、完全なユニークスキル。

しかも、固有魔法は汎用魔法に比べて強力なものばかりであることが知られている。


そんな固有魔法を持つ人々は”メギア”と呼ばれている。


この世界でメギアは多くはないが、それでも世界人口の半数に満たないぐらいの人数らしい。


メギアは唯一無二の存在であり、周りよりも強力な魔法が使えるわけだが、欠点もある。


それは、汎用魔法が全く使えないということだ。


詳しくは分かっていないが、固有魔法特有の魔力物質が邪魔をしているのではないか? という仮説がある。



俺はそんなメギアの一人であったのだが、固有魔法”回帰(リグレス)”は正直に言うとあまり使い道がなかった。


その能力は、”何かの物質を一定時間前までの状態に復元できる”というものだ。


この能力で何ができるかと言われれば、修理と体の回復ぐらい。


修理といっても、あまり物が壊れるようなことはないので、使い道がない。


体の回復にしても魔力は回復しないし疲労も残るので、本当に表面上だけ、ケガを治すくらいだ。

世の中の回復師すなわちヒーラーと呼ばれる人たちは、疲労も回復できるらしいので、俺の回帰は劣っていた。


こういうわけで、俺は魔法が全然使えない存在と認知されていった。


魔法が神聖視され、魔法の力が己の力として顕著に表れるこの魔法主義世界で、このことは致命的であった。


時間が経つたびに、将来を期待されていた俺の評価は落ちていった。

家族、使用人など周りの人たちの俺に向ける目や対応があからさまに冷めていったのだ。


今では、公爵家の面汚しとして腫れ物扱いされて、周りからは無能扱いを受けていた。


無能と蔑まれ、地位も名誉も失った俺に残ったのはあの使命感だけだった。


だが、そんな俺にもごく僅かだったが優しく接してくれる人たちがいた。


その一人が、執事のグラン爺だ。


先代公爵に仕えていた、白髭が良く似合うとても大らかで優しい人だった。


グラン爺は俺の相談にいつも親身にのってくれて、周りに味方がいない俺にとって救いだった。


神々の不在の話をしてくれたのもグラン爺だ。



ある日、俺は胸の奥に残り続ける謎の使命感を解決するため、今までで一番真剣にグラン爺に相談してみた。


「馬鹿馬鹿しい話なのは重々承知してる......けど、俺さ......何かしなければいけない気がするんだ。使命感? みたいな感覚がずっと残り続けている。うまく説明できないし根拠もない。ただの勘違いかもしれない......けど今のままじゃ何にも始まらない気がするんだよ」


俺はこの話を誰かに打ち明けたことはなかった。

言っても、信じてもらえないだろうし、どうにもならないことだから。


これまで俺は、この使命感のような感覚を一人で解決するためにありとあらゆる本を読みこんだ。


どこにヒントがあるか分からない。


あらゆる本を読んでいれば、いつかこの感覚を理解し、解決できるかもしれないと思った。


だが、無理だった。

いくら読み続けても、この感覚が消えることはないし、ヒントすら見つからない。


もう、一人ではどうにもならなくなったのだ。


するとグラン爺が


「では、剣の修業をやってみたらいかがですかな?」

「......え?」


意外な回答が来て思わず、聞き返してしまった。

だって......謎の感覚の解決策を聞いたら、剣の修業したら? だ。


話が飛躍しすぎて理解が追い付かなかった。


それに、魔法が絶対と言われるこの世界で身体強化すら使えない俺が、剣を使って何になるのだろうか。


もしかして、グラン爺は剣を振り回して、この謎の感覚を紛らわせ! とか言うつもりなのか?


「......なんで剣術? 剣でこれを解決できるの? そもそも魔法が絶対のこの世界で身体強化ができない俺が剣を扱って何になる!」


真面目な相談をしたのに、あまりに的外れな回答をされて、つい声を荒げてしまった。


好きでいるわけでもない今の自分の立場を自覚させられ、馬鹿にされたように感じてしまったのだ。


「あっ」


今のは完全に八つ当たりだ。

いつも相談にのってくれていたグラン爺のことだ、何か考えがあって言ったのだろう。


そんなことも考えずに、ただ俺のストレスをぶつけてしまった。


別にほかの人に言われても平気なのだが、信じているグラン爺に言われたからつい反応してしまった。


とにかく反省だ。


「ご、ごめん。つい声を......」

「いえいえ。こちらこそ説明を省いて、変な言い回しになってしまいました。申し訳ございません」


「いや、謝らないでよ! 悪いのは完全に俺なんだから。......と、とにかくこんなバカげた話を信じてくれてありがとう。でも、なんで剣術?」


少し気まずい空気になってしまったので、早口で話を切り替える。


「はい。ではまず質問からいたしましょう。その使命感のような感覚というのは、いくら手がかりを探しても解決できそうにないのでは?」


まったくもって、その通りだった。


「うん。その通りだよ。でもなんで?」


「ホッホッホッ。坊ちゃんが毎日のように書庫に籠って、貪るように本を読みこんでいたのは存じておりますからな」


存じられていたらしい。

少し恥ずかしい。


「それで、単純に思ったのですよ。内の情報をいくら集めても解決できないのであれば、外の情報を頼るしかないと」


それは......俺も一度考えたことはあるが、俺が外に出たところで、ヒントを見つけるどころか生きることすら困難になってしまうので断念していた。


外には魔獣など危険な存在がうじゃうじゃいるのだ。


「しかし、坊ちゃんは魔法があまり融通が利かないという欠点を持ってしまっています。そしてこれは、外でやっていくのに大きな障害となりますね。ご承知の通り、この世界は魔法主義ですからな。では、魔法を使わずとも外でやっていくのにはどうしたらよいか。そこで思いつくのが剣術というわけです」

「うん。理屈は分かった。でも身体強化が使えないのに剣術を学んで意味があるの?」


世の中の剣士ほぼ全員は汎用魔法の使い手であることが知られている。


汎用魔法の中に身体強化の魔法が含まれているのだが、この魔法を使わない限り、必ずと言っていいほど魔法と渡り合うことは不可能である。


身体強化を使わなければ、相手との間合いを詰めるのに時間がかかってしまって、その間に魔法を打たれてゲームセットだ。


つまり身体強化の魔法が使えない俺のようなメギアにとって、剣と相性のいい固有魔法を所持していない限り、剣で魔法と渡り合うことはできないのだ。


(まぁ、生身で渡り合えたら魔法主義なんて確立してないし、苦労もしないよなー)

と、そんなことを思っていると


「実は私、身体強化を使わずとも剣を扱える剣術を承知しております。本当はもう少し経ってから坊ちゃんにお教えしようと思っていたのですが......いい機会ですので、この際お教えしたいと思います。いかがですかな?」


「!?」


グラン爺が唐突にとんでもないことを言ってきた。


身体強化を使わずに魔法と渡り合える剣術なんて聞いたことがない。

そんな剣術が本当にあるとしたら前代未聞だし、魔法主義の根底を覆す可能性すらある。


まぁ......グラン爺があるって言うんだからあるのだろうけど。


そんな剣術を知っているなんてお爺様に仕えていただけあって、グラン爺は只者ではないのかもしれない。


「何その剣術。すごい。ぜひともよろしくお願いします!」

「では決まりですな。練習は明日から行いますのでご準備を」

「ありがとうグラン爺。」


よしこれで、俺のこれからの目標は決まった。

まずは剣を扱えるようにしよう。


そしていずれ外に出て、この謎の感覚の正体を突き止めてやるのだ。


「そうと決まれば準備だ。まずは...っと」


自室に戻る前に書庫へ向かう。

そうして書庫から剣術の本を持ち出し、予習として熟読した後、俺は睡眠ついた。

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