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第84話 ラザニアは見かけによらない

 切符食堂は、サービスが追い付かないほどの大繁盛。

ランチタイムに至っては、最後尾の見当たらない行列ができていた。

店内に入ってまず目につくのは、巨大な食券販売機。

そこから出る食券の見た目が完全にラザニアであるため、

食券と切符を見間違えて誤食してしまう事件が後を絶たない。

その対策として一つ言えるのは、舌の上で食券をよく転がしてみると、

切符に比べて渋みがより感じられるということだ。

事件の関係者として、店主の蒼龍はこう語る。

「非常に興味深い事件ですね。

 果たして目の前にあるラザニア風の物体が食券であるのか、

 もしくは切符であるのか、はたまた本物のラザニアであるのか。

 実際に食べてみなければ、それが私にも分からないことは分かります」

無知の知と称して、ラザニア三択クイズを哲学に結び付けるな。


 結局、切符は売れに売れ、一枚だけが残った。

一枚で小説迷宮行きの”ノベラビ列車”に乗れるのは、動物も含めて五枠まで。

俺たちは全員合わせて、五人と一匹と一頭だから、二枠分あぶれるのか。

「僕とインド象はここに残るよ」

ヤスダ……! お前が自ら辞退するとは思っていなかったぞ。

「インド象に全身を踏みつけられたいんだ」

動機は不純だが、ありがとう。


 吉村さん、市川さん、裁判長、三郎、揃ったな。

さぁ、隣人を助けに行くぜ。

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