第77話 宝くじ騒動
吉村さんは、ある宝くじを単発で購入した。
その販売価格は100万ドルと少々お高めだが、
当選金額は10億ドルとあって、見返りはそれ以上。
くじ本体にはアルファベットが七つ書かれており、
当選発表と照らし合わせ、もし全て一致すれば大金が手に入る。
奴のアルファベットの並びは、”UNLUCKY”。
アンラッキー。今すぐゴミ箱にねじ込むべきである。
「幸先悪いぐらいが、案外当たるってもんだ。
気にしない。気にしない」
出たぞ、吉村さんの痩せ我慢が。
奴は胸騒ぎでリサイタルを開催し始め、
俺の鼓膜が騒音公害で法廷に訴えると言い出す始末。
さらに、奴の顎は上下に微細に振動してメンコ用テーブルを撃砕し、
地球の核まで掘り進んだ。
そこは超高温のマグマで満たされているため、
常人では近づくこともかなりの困難を極めるのだが、
吉村さんは運良く変人。
不運あれば幸運あり。
今は亡きリー夫人のありがたいお言葉である。
「生きてますけどねぇ?」
ここにいるはずのない奴の殺気をありありと感じたが、思い過ごしであろう。
うっ、首が苦しい。リー夫人の遠隔チョークスリーパーが炸裂。
奴からは逃げられない運命なのか。
長距離掘削により、吉村さんの顎の温度はマグマの遥かその上。
今やマグマすら冷たく感じると言う。危険極まりない。
地中から戻ってきた奴は、モヒカン支配人らの手によって監禁された。
米国一揆。




