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第74話 拘り転じて病と為す

 結局、音の発生源は俺の持つ勾玉であった。

灯台下暗し、もしくは絶世の美男子とでも何とでも言うがいいさ。

ここは代わりに、謝罪に愛された男 市川さんに謝ってもらう。

「申し訳ございませんでした。

 これまで私が紹介及び推薦をしてきた段ボールの中に、

 粗悪な段ボールが混在していたことを本日認知致しました。

 東北で無名な段ボールソムリエとして大変恥ずべきことです。

 従いまして、明日の朝食は胡麻にとことん拘った

 トリプルチーズバーガーで我慢しようと思います」

市川さん自身に汚点があったとは。

バンズの上にある数粒の胡麻への拘りは、銀河寿司といい勝負だ。

市川さんと大将で拘り対決をすれば、どのような結果になるだろうか。


 市川さんは、胡麻の聖地 ミャンマーで流星群になって畑へ落下し、

作業用トラクターに衝突することで焼き畑農業の火元となり、

ミャンマーの救世主として崇め奉られ、

お礼に貰った胡麻を質屋で現金に換え、

水遁の術を駆使して香川県に渡り、

頼みすぎた天ぷら蕎麦で胃袋の限界に達した上で、

便秘で苦しむに違いない。


 対する銀河寿司の大将は、

来客を拒み続けた所為で、経営困難に陥いって会社勤めを余儀なくされ、

卓球台の訪問拭き掃除でぎりぎり生活できるくらいの金を稼ぎ、

帰り道に唯一の楽しみとして左小指の曲げ伸ばしを繰り返し、

腱鞘炎で苦しむに違いない。


 便秘 vs 腱鞘炎。どう見ても互角。

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