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第68話 必然の顔合わせ(前編)
安本孝が俺に宛てたビデオレターの内容に感興をそそられる。
もしや俺が学校祭の出店で、結婚相談所を開いたことを暴露するつもりかしら。
お、再生が始まった。
「よぉ、久しぶり。自転車を抱き枕にして寝る孝だよ。
高校卒業して以来、全然音沙汰無かったよなぁ。
そういや覚えているか?
応用スタンディングオベーション学の授業中、
お前がうっかり座ったまま拍手しちゃったときあったろ。
あれは笑ったわ。ハハハハハ」
確かにそれもあった。
顔から火が出て、近隣住民に消防車を呼ばれ、
その運転手が母親であったぐらいの恥ずかしさを覚える。
「ま、そんな無駄話はさておき、
お前が今このビデオを観ているということは、
参式漢字スロットで”安本孝”を出したということだろう。
で、言いたいことは二つ。
一つ、残念だったね。でも、投げ出したらいかん。
恩師の佐原先生も言うとったろうに。
『人間、諦めが肝心だ』とな。
俺の辞書に”矛盾”の二文字はない。
いくらお前が異議を唱えようが、断固として前言撤回はせんよ」
ビデオ切ろうかな。




