第67話 参式熟語スロット
続いて挑戦するのは、”参式熟語スロット”。
遍く漢字が流れる三列を適当なタイミングで止め、
三字熟語が完成すれば当たりというシステムになっている。
1プレイにつき10万ドルは破格が過ぎる。
ひとまずヤスダが得た賞金を注ぎ込もう。
この場は動体視力に定評のある俺に託す。
頼むぞ、俺。ああ、言われなくても分かっているよ。
つかの間の二重人格を楽しんでいただいたところで、スロット開始。
一列目『安』。二列目『本』。
こうなってしまっては、払い戻し倍率1.2倍ではあるが、
「安本丹」を狙うしかあるまい。
数多の漢字が目まぐるしく視界を過ぎ去っていく。
ここだ! 三列目……『孝』。
三文字合わせると、安本孝。
そう、やすもとたかし。俺の高校時代の同級生である。
果たして安本孝が当たり一覧に存在するのか。
あった! -10倍。なぜ損をする。
孝の野郎、どういうつもりだ。今すぐ出てこい。
手の甲の毛を引き抜いて、手の平に移植してやるから、毛並み揃えて待っとけ。
すると、モヒカン支配人がSDカードを差し出してきて言う。
「こうなる状況を見越して、
安本孝様よりビデオレターをお預かりしております」
用意周到。




