第61話 ナイル川カヌーレース 其の漆
吉村さんと裁判長が一つ一つ手作業でアセロラを拾っている。
奴らの丁寧な仕事ぶりは俺にこう思わせた。
もしかすると”アセロラ拾い”が
アフリカの雇用増大に繋がるのではないだろうか。
俺はアフリカの失業者を片っ端から招集し、
日雇いのアセロラ拾いアルバイトを実行した。
お陰様でナイル川の水神の怒りを買い、
俺のクルーザーがネジ単位で分解されるという結末に。
膨大な数のアセロラと労働者で川を賑やかにしたのが原因であろう。
あぁ、食った食った。
アセロラで腹も満たされたところで……
うわ、空腹のあまり、ぱくぱくとつい口に運んでしまった。
俺の持ちロラは0。
これは、地中海へ全力走行している二人のうちの
どちらかから奪い取らなければ。
よし、決めた。標的は吉村さん。
裁判長には強固な司法の後ろ盾があるため、迂闊に手を出せない。
万が一奴のカヌーに傷でもつけた暁には、
器物損壊罪でグアムへ島流しにされかねない。
インドア派には厳しい極刑だ。
作戦としては、労働者一団を再び川に入れて水神を怒らせ、
吉村さんのカヌーを破壊してもらう。
そこで隙を見て俺がアセロラを奪って完了。
抜け目がない。
では、労働者の皆さんは……全員帰宅済み、と。
抜け目がありました。




