第60話 ナイル川カヌーレース 其の陸
事故や挫折が度重なり、現時点での参加者は
俺と吉村さん、そして裁判長を入れた三人。
奇しくも十五夜グルメ対決の審査員の並びとなった。
俺と吉村さんはチームを組んでいるから、実質2対1で数的優位はある。
ここで、吉村さんがEXカードを額に掲げた。
どんなルール改正を行う気だ。
「チームという概念をなくす。全員平等な立場で戦いたい」
何という正義感に溢れた漢なんだろう。
鼻穴からカリフラワーが飛び出していなければ尚良い。
「私も勝負師ですから、こんな物要りませんよ!」
裁判長はそう言うと、自分のEXカードを粉々に破り捨てた。
これからアセロラを回収し、
先を争うように地中海へ飛び込むとは思えない豪勇さである。
よーい、ドン!
昔から気がかりだったのだが、
なぜベトナムの通貨 ドンが出発の合図となるのか。
この長年の疑問を解消してくれたシマウマには
最新式デザインのスポーツカーを、
人間にはピリ辛の牧草を進呈致します。
応募の際は、マイ蹄を同封してくださいませ。
と、大真面目な告知をしていたら、
吉村さんと裁判長の姿が疾うに消えている。
あ、俺のカヌーもない。
自家用クルーザー使おうっと。




