第58話 ナイル川カヌーレース 其の肆
アセロラ揚げに没頭したヤスダは誰にも止められない。
俺も既に中流域に入ってしまったので、お手上げ状態。
ひとまず現在の各チームのコロッケ数を確認しよう。
チーム主役0、チーム合体120、チーム安蛇0。
裁判長が意外に頑張っている。
三郎のつまみ食いが追い付いていないのか?
そう思った矢先、吉村さんの千里眼が発動し、奴はこう告げた。
「三郎と裁判長が手を組んだな」
まさか三郎……。
市川さんに貰ったバナナを山分けにするという条件で、
裁判長を買収して独立を目論むとは、将来が楽しみなゴリラである。
しかし、これは失念していた。
俺が冴えない霊媒師だった頃に見た動物図鑑に、
「ゴリラはテトラポッドに目がない」
と書いていたことが今になって思い出される。
ならば、ここでEXカードを使うしかあるまい。
このカードは一人につき一枚配られ、
使用すると常識の範囲内でルールを一つだけ変えることができる。
俺は、優勝賞品を第二関節シールに変えた。
銀色と腐れた赤色の二色から選べ、
自慢用・うっ血用・転売用の三種類をセットでプレゼント。
実用性や使用価値はないが、唯一燃えるゴミとしては機能する。
三郎はやる気をなくし、バナナをヤケ食い。
勿論、裁判長との交渉は決裂したようだ。
奴らのカヌーは止まったが、ヤスダは依然止まらない。




