第57話 ナイル川カヌーレース 其の参
チーム問題のカヌーは上流で沈没し、インド象は激流に攫われた。
一方、三郎は付近を漕いでいたチーム合体のカヌーに飛び移り、
市川さんの揚げたコロッケを食い荒らす。
しかし、2、3個胃袋に放り込んだところで、
三郎の顔色が急激に悪くなり、茶色い板状の物を吐き出した。
それは、段ボール。
異物混入だー!
泥水の陣で野次馬の極意を学んだ俺たちは、十二分に騒ぎ立てた。
市川さんは顔面蒼白。
奴は第一休憩所で謝罪会見を開くこととなった。
「えー、私が真心を込めて作ったコロッケの中に、
商売道具の段ボールが混入していたことについて、
お詫び申し上げます。
被害者の三郎氏とはバナナ2本の譲渡で示談が成立しましたが、
私の犯した罪は非常に大きなものです。
従いまして、私はこのレースの参加を辞退することに決めました」
市川さん……かかったな。
三郎が吐き出した段ボールは、
実は元から奴が口に含んでいた物なのである。
競争相手を一人でも減らすよう、
密かに三郎と手を組み、作戦を遂行させてもらった。
これも全てヤスダを目立たせるためだ、悪く思うな。
そして、奴がトップ通過すれば計画通り。
このとき、ヤスダは出発地点でアセロラを懸命に揚げていた。
四文字違う。




