第49話 エジプト見聞録
俺たちが着陸した場所はエジプト。
広大な砂漠にそびえ立つピラミッドや
それの守り神として君臨するスフィンクス、
ターバンに染み付いた加齢臭は誠に圧巻である。
蒼龍とドブネズミ洋平とはここでさようなら。
二人は今後も底辺陰陽師として傷を舐め合っていくと言う。
「それでは、また逢う日まで」
蒼龍は別れの挨拶を告げると、”式神 火山小僧”を召喚した。
この式神は頭が小さな火山となっている。
そこから出る煙でヘリコプターに拾ってもらおうという
蒼龍の魂胆は簡単に見透かせた。
仮にも陰陽師であるならば、瞬間移動くらい容易くしてほしいものだが。
火山小僧が蒼龍の要求に応えて噴火。
ところが、今日は運悪く”逆火山の日”であった。
逆火山の日とは、火山小僧の頭が上下逆になってしまう、
年に一度あるかないかの厄日であるのだ。
火山小僧は自分の出した蒸気やマグマをもろに足に浴び、想定外の熱さに悶える。
狼狽えた火山小僧は、
近くでツタンカーメンのゆるキャラ ”ツタメンくん”と
じゃれていた隣人に激突した。
隣人はまだいたのか。
どうやらカスタネットを理不尽ノ國に忘れてから、
気分が晴れず、存在感が皆無になったらしい。
火山小僧と隣人の衝突、これは合体する予感。
だが、様子がおかしい。二人とも姿を消してしまった。
それと引き換えに、四肢の付いたモアイ像が面前に現れ、
ピラミッドを二の腕で粉砕しようとしている。
何故に。今、俺と読者の気持ちが初めて一致した気がする。




