第43話 実は本格グルメ小説でした
ドブネズミ洋平の投げた春雨によって、
俺たちは抗う間もなく雁字搦めにされた。
ここまで紐使いに長けた奴だったとは。
そして、奴が春雨を使ったということは、おそらく”ビーフンの在庫切れ”。
日常では滅多に聞くことのないこの響き。別に心地良くはない。
ビーフンの在庫切れ。まだまだ全然。
ビーフンの在庫切れ。お、段々癖になってきた。
ビーフンの在庫切れ。しつこい。
「丁度良い」という言葉を知らないのか、俺は。
全く最近の俺はけしからん。
あれよあれよという間に、ドブネズミ洋平の王国が月に築かれた。
王国の繁華街には、ビーフン専門店が数多く並ぶ一方で、
餅の姿は一切見られない。
現状が続けば、お月見ビーフンがメジャーになってしまう。
それだけは是が非でも防がねば……待てよ、本当に餅でいいのか?
餅とビーフン、どちらが十五夜に相応しいのかの直接対決をしなければ、
全世界のビーフンファンと世田谷のマダムが黙っていない。
吉村さん・裁判長・俺が審査員を務めるグルメコンテストを開くしかなさそうだ。
となると、ビーフン料理はドブネズミ洋平が作るとして、
餅の担当を任命する必要がある。
この非常事態を救えるのはお前だけだ、西田!
間違えた、三郎!




