第41話 月上呪術合戦~泥水の陣~
一方的な積年の恨みによる因縁の対決は、
長老ウサギの泥水噴射をもって火蓋が切られた。
泥水は長老の左手薬指と小指の間から放出されている。
最も開きにくい指の間。
あと、これは血液が泥水だという解釈でよろしいか。
対する陰陽師の蒼龍は式札を使い、”式神 浄化兄さん”を召喚した。
この式神はどれだけ汚い物でも瞬く間に清めてしまう、と呼び声高い。
長老の泥水も真水に変えてノーダメージ、
と上手い具合にはいかず、浄化兄さんは泥水を全身に浴びた。
浄化と言っても、ガスコンロ周りの焦げ付き掃除が限界のようである。
浄化兄さんはその名の通り、汚い物が大嫌い。
汚れた自分の身体を見て絶句した彼は、
老化が急激に進行し、浄化爺さんへと変貌してしまった。
そのまま老人ホームへ入居。
穏やかなセカンドライフを送ってほしい。
「アレキサンドラ、お前も式神を呼び出すのだ!」
ところが、蒼龍がいくら指示を出しても、アレキサンドラは全く反応しない。
それもそのはず、アレキサンドラは日本語の勉強を最近始めたばかり。
彼が一番好きな日本語は『現実主義』であると言う。
今作に向いていないにも程がある。脳内ファンタジーであれ。
指示を勘違いしたアレキサンドラは、蒼龍を背後からビーフンで縛り上げた。
「な、何をするんだっ!」
大声で訴える蒼龍。すると、アレキサンドラが白い歯を見せて言う。
「ドウイタシマシテ」
初対面未満の意思疎通。




