第40話 第三者の気楽さ
俺は自分の目を疑った。
市川さんと裁判長がもう一度合体しようと体当たりし合う中、
ヤスダが板挟みになって押し潰され、
地中から陰陽師が2人飛び出してきたことに対してではない。
長老が撮ったドミノの動画の再生回数が、たった30分で9桁に到達したのである。
動画宛てのコメントを上から順に見ていこう。
「私を神と崇めて跪くがよい」
「アマゾン川を完全にせき止めたので、
現地住民から怒られないか心配だったのですが、
この動画を見て不安が吹き飛びました!」
「ガオー」
危険人物オンリー。NPO法人の視聴者層とは到底思えない。
想像以上に闇の深いネット界隈にショックを受けていた俺の両隣には、
いつの間にか陰陽師がいた。
「お兄さん、ちょいとお尋ねしたい。
長老ウサギの居場所をご存じないですか?」
怪しい人の話は聞かないよ、だって先生にそう教えられたもん。
「そなたたちは何者でございましょうか?」
長老が地中から勢いよく現れて尋ねた。お前もか。
すると、陰陽師の一人が血相を変えて言う。
「私たちは陰陽師の蒼龍とアレキサンドラ。
15年前、貴方に泥水を飲まされた恨み忘れやしない。
後世に被害者を出さぬためにもここで成敗する!」
もう少し早く成敗してほしかった。
つい先ほど俺が深刻な被害に遭いました。
しかし、過去に執着することの無意味さは肌で感じたばかり。
気持ちを切り替えて誠心誠意、野次馬を務めさせていただきます。




