第36話 UFOチェイス
吉村さんの運転するUFOは地球を抜け出し、月へと向かった。
遅い。時速30cmで徐行する必要性はいかに。
別に歩行者がいるわけでもあるまいし。
すると、裁判長が驚いた顔で言う。
「人が現代世界に生息する恐竜の数ほどいるぞ!」
とどのつまり、人はいない。
俺たちが亀のごとく走るうちに、何かが後方から急接近してきている。
UFOだ。あの夫婦が執拗に追いかけてきたのか。
奴らは桃をこちらにちらつかせている。
しまった。桃は吉村さんの大好物。
このままでは、吉村さんが桃に気を取られて脇見運転をし、
宇宙警察から取り調べを受けた後、
何だかんだで太陽が消滅してしまう可能性がある。
ワープ機能を使って逃げ切ろう。3・2・1・GO!
全員が一斉に文献を漁り始める。まずはワープ方法を調べるところから。
見つけた! ええと、「汁物をゴリラに与えると喜びます」と記されている。
いや、これは”スープウホウホ”。俺は”ワープ方法”を知りたいのだ。
でも、スープウホウホは試す価値がある。
俺は三郎にエメラルドで出汁を取った豚汁を飲ませた。
抜群の美味さに三郎がドラミング。
共鳴に共鳴を重ね、視界がブレたと思った次の瞬間には月にいた。
駄洒落は時空を超える。




