第33話 ツアー3日目 朝
準決勝第1試合 俺 vs 三郎。
まずはお互いに気合い溜めの時間。
俺は至極一般的なブラジル流窒素鷲掴みで精神統一を図る。
片や三郎は地面に六芒星を描き、その中心で座禅を始める。
そして、一本指を天に向かって突き刺した瞬間、スミスが腹を下した。
とばっちりおめでとう。
準備は万端。さぁ、行くぞ。
ただし、三郎のあがり症を考慮し、「最初はグー」と前置きすることに。
では、改めて。最初はグー!
……ん? チョキ? 三郎が「最初は」でチョキを出したのだ。
状況を把握すべく、俺の思考回路が瞬時に活性化し、無事オーバーヒート。
燃え尽きた頭で推測するに、「最初はグー」と事前に決めておくことで
俺が裏切ってパーに変えると読み、
そこへ応じるためにチョキを出したのではないだろうか。
でも、ゴリラの為せる業ではない。
真意を三郎に確認すると、
「ふっ、見破られてしまったか。お前の読み通りさ。
これなら俺に勝ったのも頷ける。優勝しろよ。応援しているぜ」
と、言いそうな感じでただウホウホしている。
何もかも馬鹿馬鹿しくなった。どうやら第2試合も決着がついたようだ。
なっ! 市川さんと裁判長の2人が、
完全に戦意喪失し項垂れている。
その横では吉村さんが高らかにチョキを掲げる。
これが噂の”一人勝ち”というやつか。




