第149話 エクストリーム・アイロニングやろうぜ
「エクスリーム・アイロニング専用部屋があるから案内するよ」
第3層の番人に言われるがままについていくと、
この世のものとは思えない光景に出くわした。
そこは確かに部屋ではあるのだが、様々な自然地形が共存しており、
それら全てにアイロンセットが一つずつ置かれているのだ。
準備は万端。ならば、やるしかなかろう。いざ、第2回 体育祭!
余談だが、第1回は、裁判長が規則違反のスチームを使用したことにより、
お蔵入りになっている。そのときの優勝者は、横隔膜アイドル。
しゃっくりの整然たるリズムのおかげで、極限状態でも自己を保てたらしい。
風変わりなアイロン掛けの中に、いかに日常を見出すかが、勝利の鍵となる。
最初は、第3層の番人が砂漠エリアでアイロンを掛ける。
見たところ、体型がアイロンとそっくりであることから、
奴が上級者なのは間違いなさそうだ。
だが、一度風が吹けば、無数の砂粒が服の繊維に入り込む。
それに対してどう対応するのか。
スーッ。砂嵐にも動じず、涼しい顔で速やかにアイロンを掛けている。
トップバッターでの優勝が十分にあり得るな。
奴の後ろから、交配に拘ったサソリを放ち、妨害工作を施す。
こいつは普通のサソリよりも寿命が長い。
鶴は千年、亀は万年、サソリは億年。
こう言われるようになるまでは、俺もサソリも死んでも死にきれない。
現状は交配の恩恵を受けられないが、
服さえ破いてしまえば、第3層の番人は失格。
毒針が勢いよく向かう。ズブリ。俺を刺さないで。




