第148話 プロポーズ
当然、雪女は熱に強くない。
3秒サウナと言えど、凄まじい熱気が彼女の体を蝕む。
「くぅ……」
「くぅ……」
雪女に加えて、なぜか蒼龍自身もくらっている。
「陰陽師にとって、3秒サウナは命懸けの大技なんですよ」
無理だけはしないように。この後には、楽しい楽しい体育祭が控えているからな。
行うのは、皆大好きセパタクローかと思わせて、
イギリスの伝統的スポーツであるエクストリーム・アイロニング。
辺境の地で衣服にアイロンを掛けるこの競技になら、何個でも命を懸けられる。
「あぁ、溶けてしまいます……」
いけない。アイロニストの魂に火が付き、一番の被害者をないがしろにしていた。
すると、寝起きの吉村さんが雪女にゆっくりと近付き、彼女の前に跪いた。
そして、奴は下から優しく手を差し伸べて言う。
「雪女さんが辛い時は、俺が誰よりも早く寄り添います。
なので……セッションしてください!」
雪女は悩む様子を一切見せずに奴の手を握り、二つ返事で答えた。
「はい……!」
吉村さんはシンバル、雪女は和太鼓を演奏。
褒められる点は、音の迫力のみ。
鼓膜が未だに健在であることには全く驚かされる。
即興音楽会が閉幕した頃には、雪女はすっかり元気を取り戻していた。
「ミッション完了です。シャッターを上げましょう」
蒼龍の命じた3秒サウナもクリアし、順風満帆クロワッサン。
この言葉の組み合わせは、かなり気に入っている。
さぁ、体育祭に向けて練習だ。
しかし、第3層の番人がタイミング悪く来てしまった。
「君たちが噂に聞く挑戦者か。ここまで来るのには苦労しただろう。
課題の小説は先延ばしにして、
エクストリーム・アイロニングで気晴らししないか?」
第3層の番人、緊急参戦。




