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第144話 拍手インフェクション

 「フガフガモへへ」に意味は無かった。

この調子が続くのなら、口頭でのやり取りは不毛だ。筆談に切り替える。


 『下水の荒波にさらわれた勢いそのままに、

  おいらは小説迷宮なるこの場所に突っ込んだんでな。

  訳も分からず導かれるかのようにどんどん奥の方へと歩いていくと、

  途中で身体に異変が起きていることに気が付いたんでな。

  前触れは一切無く、それは突然訪れたんでな。

  痛みなどは本当に全く感じず、それを偶然認識したときは驚いたものでな。

  そう、歯が一本も無かったんでな』


引っ張りに引っ張っての歯無し報告。

後日、警察に紛失届を提出したところ、

受理されるどころか、ブラックリストに登録されたらしい。

警察の方々の賢明な判断に称賛の拍手を送ります。パチパチバチパチ。

ん? 念のため、もう一回拍手を。パチパチバチパチ。

やはり”パチ”の中に”バチ”が紛れ込んでいる。

”バチ”の芽は今のうちに摘んでおかなくては、後々とんでもないことになるぞ。

パチパチバチバチ。早くも”バチ”が勢力拡大。

現状通りに事が進んでしまえば、拍手は”バチ”の一強となる。


 今回は接触による感染と見た。中央に隙間を空けよう。

パチパチ バチバチ。よし、これで最悪の事態は免れるはず。

パチバチ バチバチ。空気感染! 油断していた。

少なくとも、残る一つの”パチ”だけは厳重に保護しなければ。

距離を十分に取り、空気感染の対策も怠らない。

[パチ]   バチ バチバチ。括弧の砦で防備は固めた。

20分後。バチ   バチ バチバチ。”バチ”の勝ち。

拍手は新たなる時代へ。

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