第140話 俺、悪戯っ子
俺以外の鼻の穴にスライムを詰めて密閉するという条件の下、
何とか同行許可を得た。
臭いの大本を処理する方が恐らく速やかに事が進むと思われるが、
どうしてもスライムを詰めたかったのだ。
そのスライムにジョロキアを練り込んでいたことは、
皆のダンサーのような暴れっぷりでお分かりいただけるだろう。
悪戯っ子でごめんなさいね。フフフフフフ松フフフ。
『ワ』や『ウ』ならともかく、『松』は『フ』に似ていないか。
『松』をどうにか『フ』の群れに紛れ込ませようとしたが、
これほどまでに片仮名の中にある漢字が異彩を放つとは。正直侮っていた。
思い思いのサングラスを掛けた俺たちは、第2層を縦横無尽に駆け回った。
一本道なのに。無意味に体力を消耗するだけなのに。
吉村さんは童心に帰って麻雀と盆栽鑑賞を嗜んでいる。
大人の娯楽の代表格を幼い頃から究めていたのか。立派な英才教育である。
おっと、第2層の番人がわざわざ向こうから迎えに来た。
これだけ到着に時間のかかる挑戦者は珍しいようだ。
「中々来ないと思ったら、こんな所で道草を食っていたのかい。
まぁ、いい。今回の課題は『仇討ちについての論文』だ」
二回目にして、もう小説の枠を超えた。
当然、俺は仇討ちには精通していない。
となると、ここは三郎が適任。
奴は象形文字の第一人者。きっと奇跡を起こしてくれると信じている。
ゴリラと言えば論文、論文と言えばチンパンジー。
あれ、相互関係が結ばれていない。
そんなことお構いなしに書け、三郎!
『**********~~~~~~~~~~』
引っ込め、三郎!




