第139話 でっち上げポリシー
プリンセス椿の善意によって主役に復帰することはできたが、
俺を取り巻く周囲の視線がなぜか冷たい。
もしかして奴が余計なことを口走ったのではないだろうか。
「あひひひ」が公共の場に知られてしまえば、
もう俺は表に出られる人間でなくなってしまう。要注意だ。
第2層は中盤から一本道が続く。
ここらで吉村さんたちと合流しておきたい。
すると、俺の願いに応えるかのように、
眩い光の中に三つのサングラスが現れた。
しかも、それら全てが食品から作られたお粗末な物ではなく、
しっかりとした銘柄品である。
そんな高級志向の奴らとは、ゴリラとウサギと30代男性。
「備えあれば患いなし。
サングラスなんか、常に携帯しておくぐらいじゃないと。
だけども、非常用だからと言って、品質を妥協してもいけない。
伝説の男は365日通じて一流さ」
凛々しい様子で信条を力説する吉村さんの上着のポケットから、
一枚の白い紙が落ちた。
それはどうやら領収書のようだ。
拾って見てみると、そこにはサングラス三つを速達郵便で
送ってほしいという旨の注文が記されている。発行時刻は5分前。
「今回は例外だ」
例外確率100%。危うく奴の株を上げるところであった。
今、間違いなく言える。吉村さんは胡散臭い。俺は納豆臭い。
そうか、この強烈な刺激臭が冷遇の原因だな。
消臭スプレーをふんだんに自分に浴びせかければ問題解決。
あれ、思惑が外れた。皆がなお一層距離を取り始めたぞ。
俺の胸の内は穏やかでない。急いでスプレーのラベルを確認。
消臭ス(ー)プ(カ)レー。




