第137話 空回り万歳
俺は納豆サングラスを、他のメンバーは韓国のりサングラスを掛け、
第2層に飛び込んだ。これぞ理想的なアイガード。
「うわっ、眩しいんだけど!」
立ち入り後、即座にプリンセス椿が悲鳴を上げた。
「失明しちゃうわぁ! むしゃむしゃむしゃ……」
確実に食っている。食欲を理性で抑え込めないのは万人共通であるらしい。
そんな非常事態に備えて、予備の韓国のりが俺の胸ポケットに入ってい《《た》》。
ハハハ。心配無用、既に完食したよ。
先ほどのやり取りの末、プリンセス椿の下僕に成り下がった俺だが、
悩み事が一つある。
サングラスキャラクターとして振る舞うことに、
どうしても及び腰になってしまうのだ。
粋な身なりをするのに慣れていない所為であろう。
しかし、ナルシズムの伝道師 黄金仮面男が今ここにいないため、
奴に格好つけ方の教えを乞うこともできやしない。
「イカした男になりたいなら、あちきに任しやがれ」
ご主人様、みすぼらしい下僕にお気遣いいただき、
誠にありがとうございます。
ですが、今回はお気持ちだけで結構です。
俺は、銀河寿司の大将に貰ったげそ揚げを大量に持っていますから。
これを余す所なくセロハンテープで全身に貼り付ければ、
それはもう《《イカ》》した男です。
ハハハ。イカジョーク、ご堪能いただけましたか?
先ほどのやり取りの末、プリンセス椿から足蹴にされている俺だが、
めげてはいない。
いや、自分のあるべき姿に行き着いたとさえ思っているぐらいだ。
以前は滲み出る尊厳によって俺の発言が制約を受けていたが、
今なら堂々と言い切ることができる。
主役交代の日は近い。




