第135話 サングラスを作ろう(中編)
オカルトマナー厳選本には、サングラスの作り方は載っていなかった。
本が役に立たなければ、甦らせる前世の記憶。
もしも前世の俺もサングラスを作っていたのなら、
その製法が頭の片隅に眠っているはず。
両薬指を奥歯に押し当て、気を一点集中。思い出せ。
親知らずを発見したことで集中が途切れた。後日、抜歯しよう。
今のうちに品行方正タウンの市川歯科の予約を取っておくか。
番号を打ち込み、電話を掛ける。
「おはようございます。診療のご予約ですね。
丁度3年後の午前2時にお越しください」
大繁盛。半ば強引に患者を丑三つ時に呼ぶ病院に需要があるとは。
万が一そこに出向きでもすれば、
呪いの儀式の生贄にされることが分かり切っている。
上等だ。俺は命より抜歯を迷わず選ぶ。
仕切り直して、再集中。ぼやけた映像が浮かんできた。
ここから集中力をさらに高めていき、解像度を上げる。
あれ、ぼやけたままだ。もっと精神を研ぎ澄ませ。
よし、くっきり見え……吉村さんの全裸映像ではないか。
すぐさま意識をシャットダウン。あれは理由のあるモザイクだったのだな。
見たくもない物を見てしまい、気分を害した。
前世の想起挑戦はあと一回で止めにしよう。
最後の集中。これまた別の不鮮明な映像が浮かんできた。
その中には黒い何かが見える。これがたぶんサングラスだろうな。
やはり前世から俺はサングラスと相思相愛。
念が増幅するに連れ、次第に映像がクリアーになっていく。
お、前世の俺がいる。奴が持っている黒い何かは、韓国のり二枚。
そして今、それを目に当てた!
前世の俺はイリオモテヤマネコと同類。




