第124話 選ばれし者(前編)
土偶デーモン6世をその場で落胆させると、ノベラビ列車が出発。
ギャンブル動物園はギャンブル要素が全く無かった。名前がもう詐欺だ。
間もなくして、待望の車外アナウンスが耳に届く。
「次は、終点 小説迷宮、小説迷宮。お忘れ物の無いようにご注意ください」
いよいよだ。隣人、身体のあらゆる部位を長くして待っていろよ。
終点 小説迷宮に到着した。
見渡す限り続く灰色の巨壁。名前通りの大迷宮だな。
ところが、いくら周囲を歩いても入口が見当たらない。
「あちきが作ったる」
プリンセス椿はダイヤモンド弾丸を手持ちの拳銃に込めた。
なるほど。ダイヤモンドは物質の中でもトップクラスの硬さを誇る。
コンクリートの壁など、安々と貫通してしまえるだろう。
「あら、弾倉以外全部、列車に忘れたわぁ」
言わんこっちゃない。
拳銃のほとんどを誰かが取りに戻る必要が出てきた。
それを決める手段は、当然ながら市川家の習わしとされている阿弥陀くじ。
本人がいないのが唯一惜しまれるところではある。
早速、地面に阿弥陀くじを描いて始めよう。
スタート地点は7箇所あり、そのうちの一つだけがアタリ、
すなわち忘れ物回収権利の獲得に繋がっている。
一番手の犬が分岐する直線を辿っていくと、
奴の後ろ姿は豆粒くらいまで小さくなった。
グッドラック。またどこかで会おう。
犬を世界一周に送り出し、次は三郎に順番が回ってきた。
結果はハズレ。見せ場が無く、ただただ可哀想。
流れるような展開でハズレを引いたのは吉村さん。
「可哀想に」と声を掛ける暇も見出せず、
三郎を凌ぐ悲壮感が奴から痛切に感じられた。
四番手は優秀候補筆頭のイリオモテヤマネコ。
が、筋肉制限を大幅に超過し、強制不参加。
阿弥陀くじは万人が楽しめる行事ではないようだ。




