第123話 ヒロイン発覚
人間と土偶のハーフ 市川さんが吉村さんを間一髪で救った。
二人の間に結ばれた深い絆を目の当たりにしては、
大粒の涙を流し、その水圧で小石に穴を開けずにはいられない。
しかし、土偶デーモン6世はお構いなしにビームを連射。
その標的は……悪という概念!
今作のヒロインは土偶でした。
正義の名の下にデーモンが勧善懲悪。混沌とした時代になったものだ。
市川さんは颯爽とまたラスベガスへ帰っていった。
母親と久々に再会できたことを父親に報告しに行くのであろう。
一方、土偶デーモン6世は埴輪の残骸を全て拾い上げ、
それを掲げながら天に向かって祈りを捧げた。
すると、破片が一つずつくっつき始め、
遂には何とも言い難い凹凸尽くしの塊が出来上がった。
奴はそれを足で巧みに操ってドリブルし、ディフェンダーをごぼう抜きに。
ペナルティエリアでは、塊を爪先で高々と跳ね上げ、渾身のバイシクルシュート。
塊はキーパーの手が絶妙に届かない角に吸い込まれ、ゴール!
縄文イレブンのエースストライカー 土偶デーモン6世が決めたー!
解説の吉村さん、只今の好プレーいかがでしょうか。
「貴重な決勝点となりましたね。
彼女がこの調子を維持できれば、今季の得点王も見えてくると思います」
今後の活躍にますます期待のかかる土偶デーモン6世選手でした。
突然のサッカー中継、大変失礼致しました。
弟子をボール代わりに使用するという非土偶道的行為を
我々が見過ごしていたこと、謹んでお詫び申し上げます。
試合終了後、彼女に青銅器を見せることにより、
文明の遅れを身をもって感じさせましたので、ご安心ください。
現場からは以上です。




