第115話 風流姫 椿
情報を聞き出して用無しとなった市川院長を手術台に縛り付け、
俺たちは病院を後にした。
「黄金仮面男が父さん……なのか?」
市川さんは相当ショックであろう。
未だに意味の分からない5文字を連呼する男が実の父親だったのだから。
「私はラスベガスに戻ります」
そうだ、一度気分を入れ替えた方がいい。
黄金仮面男は今頃、陰陽師カジノ改めラスベガスヨシムランドで
インド象に踏まれて気持ちよくなっているヤスダに
そこそこの不味さの目玉焼きを自分で作らせて食べさせているはずだしな。
状況説明が冗長の最高峰。登山家でさえ恐れをなす。
市川さんと別れ、ノベラビ列車の屋根にプリンセス椿と共に乗り込んだ。
当面の目標は、吉村さんと裁判長と三郎を探すこと。
俺が鏡島の夢を見ている間に犬からの襲撃に出くわした、
と市川さんは言っていた。
それで俺を除いた皆が、方々へ散り散りになって逃げたらしい。
俺を見捨てるとは血も涙も胃液もない奴らだ。消化不良になってしまえばいい。
お、プリンセス椿がそのときの俺の心情で一句詠んでくれるようである。
風当たり 人肌恋しい 屋根の上
待ち侘びて来た 海老反り少女 捻挫で悲し
仏足石歌。5・7・5・7・7・7は詠い手絶滅危機の仏足石歌なのだ。
「次は、ギャンブル動物園、ギャンブル動物園。
埴輪をしばかないようにご注意ください」
陰陽師カジノと役割が被っている。
そこで既に射幸心を煽られ過ぎたので、賭博はもう懲り懲り。
でも、『ギャンブル動物園』?
スミス・J・新村が飛行機内で歌っていた曲名ではないか!
聖地巡礼。




