第112話 救出劇
それ以来、奴らとは音信不通になった。
完
全にしてやられたな。心を抉るような喪失感が俺を襲う。
おい、『完全』が分断されて、話が終わったような感じになっているではないか。
作者がしっかりしないで、誰がこの作品を纏められる?
顔を洗って出直してくるんだワンワン。
犬の言葉の受け売りで作者を戒めたところで、診察シーンに移る。
プリンセス椿の体力がそろそろ限界を迎えてしまいそうなのだ。
市川院長、お願いします。
「椿ちゃん、よろしく。じゃあ、旋毛診ていくね。はい、いくよー」
あなたの捻挫はどこから? あちきは旋毛から。
この問答を省いたがために、市川院長が変人のように思われてはいないか。
「特に異常はなさそうだけどねぇ」
そうでしょう。ご迷惑をおかけしました。
「患部に包帯だけ巻いておいたよ。
簡単な処置しかしていないからね、診察料はいらないよ。
気を付けて帰りなさい」
正真正銘の聖人だ。彼に後光が差しているようにまで見えた。
「地獄へな!」
正真正銘の狂人だ。市川院長がプリンセス椿に向かって機関銃を連射。
捻挫中の椿は反応がかなり遅れている。
俺が助けるのも間に合わないだろう。どうすれば。
ドスドスドスドスドスッ! シュー……
「段ボールは人も守れる最高の素材です」
市川さん! 何と、段ボールで全身武装した奴が、
プリンセス椿と弾丸の間に捨て身で割って入っていた。
はだけた鎧を脱ぎ捨て、市川さんは言い放つ。
「もう父さんの好きにはさせませんよ」




