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第108話 絶対王者 好奇心

 訴訟直前、イリオモテヤマネコの背中に赤色で派手に書かれた

『患者』という二文字を見てしまった。

部外者の猫に軟禁される俺たちの防犯意識は、薄れてはいないだろうか。

”俺たち”と言えど、他のメンバーは女子小学生とウサギ。

否応無しに俺が保護者認定されることだろう。

詮ずる所、全責任を追う役目は俺になる。

時は満ちた。今こそ、大人の余裕を見せるに相応しい。

手始めにピースサインを作って一呼吸置く。

右ピース。左ピース。ダブルピース。おまけで腹踊り。

結果、ナーバス。慣れない大はしゃぎは、

精神へ著しく大きな負担をかけると分かった。


 「うりぃ……足首が悲鳴を上げてらぁ」

プリンセス椿の捻挫が痛みを増してきているように見える。

時間がない。いかにしてこの密室から脱出を試みようか。

頭を捻る俺に長老ウサギが、イリオモテヤマネコに

聞こえない程度の小声で話しかけてきた。

「私にお任せを」

そう言うと、奴は空中にとある図形を描き始める。

その形はまるで砂時計。なるほど、オリオン座だ。

「漫然と二代目ベテルギウスとして務めていた訳ではございませんよ」

長老ウサギがひっそりと笑う。

ガチャッ。ギギィ。入口の南京錠が独りでに外れ、錆び付いた扉が開いた。

凄い。神業だ。だが、もっと一際目立つ演出を期待している自分がいた。


 「さぁ、出ましょうわぁー!」

くそっ、長老ウサギが兎質に取られた。

「素直に上腕二頭筋を触らないからこうなるんですにゃ!」

怒れるイリオモテヤマネコの対処法は知識にない。

急いでインターネットで検索すれば間に合うか?

ウサギ 悪行 追放 月流し、と。

長老ウサギの引っ越し理由に気を取られている自分がいた。

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