第103話 正統派ツッコミ師
「次は、品行方正タウン、品行方正タウン。
礼儀だけには厳しくお気を付けください」
品の良さに自信のある俺は、プリンセス椿を肩車しながら下車した。
あわよくば、プリンセス椿の捻挫を治せる病院も探したいところだ。
「病院なんてええから、あちきは料亭で焼酎を浴びるほど飲んで、
怪しい儲け話に花を咲かせたいやぁ」
10歳から湧く欲望とは思えない。
これは、幾度となく挫折を繰り返し、人生に生き甲斐を見出せなくなった
借金1000万円超の50代男性が言い出しても怪訝な顔をされる言葉だぞ。
「あちきも8桁の借金を抱えとるんでぇ」
本当か!? いや、そりゃそうか。
海老反りガンマンで収入を得られるはずがない。
むしろ銃刀法違反で罰金を払わなければならないだろう。
「50円は莫大で辛いよ……」
小数点の右側にある0を桁数に含めるな。
50.000000円の借金を返せない時点でどうかしている。
駄菓子の大人買いかな。
駅から街へ出向くと、近くを歩く人たちの会話が自然と耳に入る。
「冠婚葬祭に着ていく服は全部ダメージパンツ一丁でいいよね?」
社会の大窓フルオープンではないか。
最低限の身だしなみとして、ダメージハチマキを締めて、
ダメージセーターを着て、ダメージサンダルも履いておきなさい。
「スプーンもいいけど、羊は特に飛距離が出るなぁ」
ノートパソコンの方がもっと飛ぶだろうに。下調べが足りないぞ。
品行方正に気を遣って、全ての発言に対して真っ当にツッコんでいたら、
劇的に体力を消耗した。
これからは、下品にいこう。




