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第102話 小麦粉婿婿子婿婿

 十二右衛門は一体どれだけの差し歯を持っていたのだろうか。

今は90歳の老人並みの口の開き具合になっていることが窺える。

奴が見るかどうかは分からないが、

配列を変えて、俺からメッセージを送ろう。


小 麦 粉 婿 婿 子 婿 婿


これでよし。重なる「むこ」の発音が心地良い。

早口言葉と考えて、試しに三回続けて言ってみる。


小 麦 粉 婿 婿 子 婿 婿

小 麦 粉 婿 婿 子 婿 婿

大 米 塊 嫁 嫁 親 嫁 嫁


三回目はなかったことにしていただきたい。

抜きん出て言いづらいにも関わらず、全て逆の意味になってしまった。


 「大米塊嫁嫁親嫁嫁 大米塊嫁嫁親嫁嫁 大米塊嫁嫁親嫁嫁!」

誰だ!? ここまで難解さを極める早口言葉を物ともせずに言ってのける強者は?

「あちきに言えない早口言葉はありゃせんの」

旋風が頬を横切った。崖上から舞い降りるハイヒール。

カツッ。奴の背負う紅蓮のランドセルは、月に照らされ怪しく艶めく。

両手は38口径の拳銃を一丁ずつ握っており、

腰に視線を移せば、巻かれたコルセットにはシワひとつない。

存在は夢でなかったらしい。

現役女子小学生 兼 海老反りガンマンのプリンセス椿、心強いぜ。

「着地の衝撃で足を挫いたみたいねぇ」

一人で頑張るか。

「安静にするわ」

好きにしてくれ。

「動けんから、あちきの分も頼むでぇ」

抱え込んだ荷物は計り知れなく重かった。

「ついでに言っとくけど、あちきの体重は28.5㎏や」

軽かった。

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