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異世界演芸場へようこそ  作者: 日向 晃
浜野矩随(はまののりゆき)
7/21

(5)

「へへへ、なんか問題ありますかね?」


そういって笑いながら、ピロリが客席の方に話かける。

どっと沸く、客席。誰だよ、あの二人って声が聞こえているから

そうか、場違いな俺らが出てきたから、出オチで受けたわけね。


「新人芸人が入りましたんで、ご紹介したいんですよ。いいですかね。」


客席から沸く拍手。


ギターを鳴らしだすピロリ。


「へへへ、まずはそちらのカワイイお嬢さん。

 白猫のマリーちゃんからご紹介。さぁ、どうぞ。」


「いや、私は、師匠のマネージャーで・・」


戸惑うマリーちゃん。そりゃそうだ。急に女芸人扱いされても。


「あ、そう。あたしゃてっきり曲芸を披露する猫娘さんかと・・

 こいつは失礼。こちらは、マネージャーさんなんだそうで。

 じゃあ、こっちが本当に芸人さんだ。」


そうやって、俺を紹介するピロリ。完全にマリーちゃんのおまけな感じ。


「どうも~。」


「本日は、どちらから来ました?」


「あの世から。」


お、一笑いとれた。


「あぁ、今日転生してきたのね。で、お名前は?」


素人のど自慢の司会者のような質問をしてくるピロリ。


「赤西与太です。」


本名を思わず答えてしまう俺。


「ダメだよ~。本名は聞いてないよ。芸名、芸名。」


ピロリのいじりで沸く客席。

困ったなぁ、芸名なんて全然考えていなかったよ。


「寿限無亭長介、でお願いします。」


で、名前と落語で思い出したのが、落語の「寿限無」だったから

思わず名乗ったのが今の芸名ってわけでして。


「このあと、寿限無亭長介師匠には、「落語」というのを披露してもらいますので、お楽しみに~。

 その前に、今日もあたしの歌を聞いてもらいましょうかね。」


目くばせをするピロリ。

ぽかんとしていると、マリーちゃんはすでに袖に下がっていて手招きしている。


「あ?そうか。」


すっとんきょうな声を出して、焦って脇へ下がる俺。軽い笑いが起きる。


「へへへ。」


相変わらずヘラヘラしているピロリだが、少しだけピリッと気合が入った顔をした。


ピロリが歌いだす。

ギターで弾いているは、オペラ音楽らしいが、そっちに疎い俺は

何の曲かは良くわからない。


ピロリの芸の凄いところは、このオペラの歌を全部ひとりで歌うってことで。


ちなみに、ピロリって呼び捨てにいいのっておもうかもしれないけど。

前にピロリ師匠っていったら、逆に怒られて。


俺はそういう固っくるしいの嫌だから、ヤメロっていうんですよ。

で、さん付けしたら呼び捨てでいいって。

マリーちゃんからは、師匠っていわれても、さん付けでも文句いわないんだけどね。


だから、ピロリ。


で、変なおっさんだけど、見事な芸なんです。

ソプラノ、アルト、テノール、バス。すべての音域を一人で歌い上げる。


そして、俺にはよくわからないのだが、ギターでオペラの曲を弾くというのが

実はこれまた神業だったりするらしい。


一部じゃ、マエストロ・ピロリとか言われてるらしい。

本人が言うにはだけど。


で、一盛り上がりピロリが作った後に高座に上がるというのが、これまた

なんともプレッシャーだったんだけど。


スタンドマイクでギター弾きながら歌った後ですからね。


そこからいきなり、座布団の上に座って噺をするスタイルの人。


で、そのあとの演目がバレエがあって、最後にオーケストラが出てきて

演奏して終わりというプログラム。


色物とはいえ、浮きすぎだよなって、感じで、好奇の目に晒されながらの

デビューなわけです。


とはいえ、やるしかない。


「師匠、出番です!」


マリーちゃんに促されて、袖からそろそろと高座に上がっていったわけです。


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