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異世界演芸場へようこそ  作者: 日向 晃
浜野矩随(はまののりゆき)
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(1)

初舞台編「浜野矩随はまののりゆき」の章スタートです。

浜野矩随はまののりゆきという古典落語のネタがあるのをご存じですかね。

唐突に何を言い出すかと思うかもしれないけど、俺にとっては落語が好きに

なったきっかけだったりするのです。


どういう話かというと、腰元彫りという要は刀の柄なんかに彫刻を彫る職人

のことだけれど、名人といわれた父親と不器用な息子がいて。

ちなみに、息子の名が「はまののりゆき」です。

父親は、「はまののりやす」といいます。

で、父親の死後、「あいつはダメだ」と誰からも見向きもされない。

けれども、父親に世話になった義理で若狭屋という道具屋の主人だけは、

どんなに下手でも息子の作品を買ってくれていたが・・

いつまで経っても上手にならないので二日酔いで機嫌が悪かった若狭屋さん

ついに堪忍袋の緒が切れて、手切れ金だと金を渡し、

「商売替えをするか、さもなければ死んでしまえ」と叱り飛ばすわけです。


それで、本当に死のうとする「のりゆき」だったのだけれども、

母親に形見に死ぬ前に仏を彫ってくれと言われて、不眠不休で仏を彫る。

これが見事な出来栄え。人間死ぬ気になれば、なんでもできる。

そんなことなわけですが。

ネタバレになるので言わないけれど、悲しい出来事もあります。

で、初めて落語を聞いて泣いたわけです。


と熱く語ってしまいましたけれど・・・


実はね、異世界で初めて高座に上がった日に会ったんです。


この話を得意にしている馬面の師匠に。

で、こっちの世界じゃ、あの面長の顔はそのままに体は馬になってましたけどね。


ただ、不思議なことに楽屋ではなくて、客席の方にいたんですね。

師匠が言うには、


「前世で落語はやりつくしたから、もういいや。」


なんて言うんです、おかしなものでしょう。

名人の前で、単なる落語好きの俺が高座にあがって噺をするってんですから。


そんな師匠の前で落語やったっていうんだから、怖いような嬉しいような・・


そうそう、トラックにはねられて、死んだと思ったら、白猫のマリーちゃんの

お情けで、この世界に転生したって話はこの間しましたよね、俺。


それでね、ラッキーだったらしい。


何がっていうと、閻魔大王が言うには、この帝都アルタ(新宿じゃないですよ・・)

に転生できる人間っていうのは、もっと文化や芸術に明るい方々らしくて・・

だから、何かの名人だとか昔の貴族の方々なんかが多い。


あとは、空想上の生物や神々の皆様、あとは人間以外の動物の皆様。

動物の皆様は、前世で人間に面倒かけられているので、エンターテイメントを

楽しんでもらうためにここに送られてくるんだとか。


人間は、死んでも生き急いでるから、さっさと天国(あるいは地獄)にいって

さっさと生まれ変わるやつが多い、つまらんもんだと閻魔大王がボヤいてたっけ。


おっと、また横道にそれましたね、失礼。


何がラッキーかっていうと、ここに転生させてもらったこともあるんだけども。


「チート能力」


ってやつを閻魔大王がサービスしてくれたんです。


「ここに来て、芸人として生きていく以上、最初から師匠と呼ばれて

 高座に上がり、皆を楽しませる義務がある。が、お前にその技量はないだろうから。」


というんで、「チート(=ずる)」で補強しておいてやるってことらしい。


その能力というのが


「見たり聞いたりしたことをその通り真似できる」

「扇子で結界を張り、お客を包み込むことで心に直に働きかける」


っていう能力なんだけれども。


簡単に言えば


「モノマネがすごいうまくなり、一度見たことのある芸は自分のものにできる。」

「文字通り胸に響かせられる」


ってことなんだけど。

まぁ、下手くそでも急に名人並みの腕を持てたってことです。


で、この時思ったんですよね。


実は、「死ぬほど頑張ったから」が理由じゃなかったりしてと。

「はまののりゆき」も一心不乱に仏を彫ったから、急に名人の実力を手に入れた

わけじゃなくて、実は俺のように「チート能力」を仏に授けられたのではないか。


閻魔大王から能力の説明と実践方法の説明を受けながら、そんなことを考えて

いたのも今となってはいい思い出です。


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