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メイドBook  作者: やまは
たった四日間の出来事
7/131

7冊目 ミネアの町

 ショウたちは<ミネアの町>。その入り口に到着していた。

「人ってこんなにいるんだな!!」

 ショウにとってすべてが初めてだった。町の賑わい、立ち並ぶ家屋、そして人の数。

 ショウは目を輝かせて、飛び込んでくる光景に目を奪われていた。

「まずは町を見て回りましょうか。そのあとお食事でもいたしましょう」

 フィアに連れられる形でショウは<ミネアの町>に突撃していった。

 世にも珍しいかめのぬいぐるみを頭に乗せた男と、美人メイドは辺りをざわつかせていた。

 ショウとフィアとノロは特に気にしている様子はなかった。


 ミネアの町には武器屋に道具屋。宿屋に食事処など様々な施設があるが、特筆すべきなのはその人の数。人の波で溢れかえっていた。それはどこかの通りのような光景だった。

「フィア? なんか宿屋が多くない?」

 ショウはフィアに引っ張られながらも、人の波に揉まれながらも、目はしっかりと街の光景を捉えていた。建物の割合に対しての宿屋の数が圧倒的に多かった。

「この時期のミネアはお祭りですから。そのためほとんどの家屋では宿屋として貸し出しているのですよ」

「そ、そうなのか」

 町全体がお祭り状態。需要には供給が必要なのだ。


 一通り見て回ったショウは疲れ切っていた。食事どころではないくらいに。

 人の熱気というものがこんなにすごいものなのかとショウは思った。

「大丈夫か主人様」

 ノロの心配する声がした。

 ここはミネアの中央にある<噴水広場>。ショウはそこにあるベンチに腰かけて天を仰いでいた。頭のノロを膝に乗せて。

<噴水広場>は、円形に作られたミネアの憩いの場所。中央に噴水。少し離れたところに円を作るようにベンチが等間隔で置かれていた。マイナスイオンが出てくる素晴らしい広場。

「もうだめだ~。きもちわるい」

「仕方ないのぅ。<回復魔法>を使ってやるから甲羅に手を乗せるのじゃ」

 ノロに言われるがままショウはぬいぐるみの甲羅に手を乗せた。

 ショウに押し寄せた心地よい感覚は、ショウの体調を万全なものにした。

<回復魔法>には、体力回復、精神回復、病気の回復などさまざまあるが、魔力回復はできない。

「助かるよノロ」

「主人様のためじゃ。じゃがフィアのやつ何をしておる」

 フィアはショウの休憩中に宿屋の状況を見に行っていた。

「戻ってきたぞ、ほらっ」

 回復したことによりショウは天を仰いでいた体を戻した。すると前からフィアがこっちに向かってきていた。冷静になっていたショウはフィアにざわついている人々に今更気づいた。

「残念ですが宿屋はどこも満室でした」

 戻ってきたフィアから結果発表は、残念ながら縁がなかったというものだった。

「あとこれを首にお着けください」

 フィアから渡されたのはベルだった。ネックレスのようになったベルをショウは首元に着けた。

「見つけてくれたのね。ありがとフィア」

「ご主人様のためでございますから」

 師匠と弟子は同じことを言ってきていた。

 フィアはベンチに座ることなくショウの横に佇んだ。これはメイドとして主人との力関係を表している。

「そういえばお祭りって言ってたけどなにかやるの?」

 そんなことよりもショウは引っ張られているときにフィアが言っていたことが気になっていた。

 この人だかりと関係があるのかとショウは思った。

「ミネアで……というわけではありません。ここが一番近い町というだけです」

「え?どういうこと」

「牛じゃよ、牛。<魔牛>というのがそろそろ来るのじゃ」

「牛見るためだけにこんなに人がいるのか?」

「<魔牛>です。ただの牛ではありません!」

<魔牛>は世にも珍しい動物と魔物の中間の存在。その角は大変貴重な物で、闇取引されるほどのもの。

「魔牛……角……それ玄関にあったやつか!」

 フィアの洋館。玄関にあるケースにの中に8本並んで置いてあるのをショウは思い出した。

 赤、青、黄、緑。4種類の色が組であり、それは色鮮やかな宝石のように淡い輝きを放っていた。

「よく覚えとるのぅ主人様。それじゃ。それが色を変えるというのでこんなに人がいるのじゃ」

「なるほど、あれすごい綺麗だもんな」

 あの宝石がこの世に存在するというのなら一度は見てみたい。何度だって見てみたい。そう思う人たちがこれだけいるということに、ショウが納得するのにはそれほど時間が掛からなかった。

「見に行こうよ」

「そのつもりですよ。それよりも今は宿がないことが深刻な問題です」

 ショウ的にはテントでもよかったのだが、フィアはそうじゃないらしい。

「どうもお嬢さん」

 いきなりショウたちは声をかけられた。ショウをはじめ一斉に声のする方を振り向いた。

 噴水をバックに、ショウと同じくメイドを3人も引き連れた青年がそこにはいた。

 ショウはベンチから立ち上がって、向かい合った。やることをやるために。

 

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