17冊目 絶滅危惧種
<魔牛>の角は高値で取引されている。そのため乱獲によりそのは数の激減。今では表立っての取引は行われていない。
「ケレスのやつ!!とっておきの場所って言ったのに」
ショウは怒った。
「まぁ、でもとっておきの場所には違いありません。誰もいませんし」
フィアはショウをなだめた。
「……川がなければのぅ」
ノロは現状を報告した。
川。それはショウたちがスタートした湖から今もなお途絶えることなく続く陸の青。
そんな川の中でショウ達は水魔装をしながら魔牛を見ている。さながら水遁の術。
視界を遮るものはなにもない。起伏もない。ただ草原の緑と魔牛の黒がコントラストを作っていた。
魔牛の数は10匹。
「それはいいけど……なんでこんな遠いの?」
ショウには魔牛が点にしか見えなかった。それでも魔牛の姿を捉えることができたのはフィアから受け取っていた<双眼鏡>があったからだ。それは魔法道具。
<双眼鏡>は魔力を込めると、その込められた分だけズームする。とてもシンプルで使い勝手がいいと評判。
「仕方ないじゃろ。規則じゃ」
この時期の魔牛は警戒心が強く近くの生き物に襲いかかっくるとのこと。川の中で見ているのは気配を少しでも消すためでもあり、水魔装の鍛錬も兼ねていた。
「それともう一つ。角の変化に伴う強い光は失明を引き起こしますがどうしますか?」
「このままでいいです……」
目を失ってまで近づくリスクを負う気はショウにはなかった。だがそれだけの価値があの魔牛の角の輝きには秘められているのを遠目からでもそれは分かった。
自由奔放なリーエはここでもそれを見せつけていた。
「おーい、リーエ!足こっち向けてちゃ見えないぞ」
リーエに向かって呼びかけたショウだが返事はなかった。朝は魔力がないリーエはショウたちの目の前の川辺で丸くなっていた。
「あれ寝てないか?」
「一体なにしに来たのでしょうか?」
「バカじゃなあやつは」
それはいきなりやってきた。激しい閃光と共に、フィアに頭を沈められた。ノロごと。
「申し訳ありませんご主人様。しばらくこのままお沈みください」
「別にいいよ」
「ワシを潰すでないフィア!」
水魔装中なので水の中でも特に問題はない。水面を駆けていく閃光がショウたちの頭上を覆い尽くしていた。それを目にしたショウはこれは失明するなと思った。
「この距離なら目が眩むくらいで済みますが万が一に備えての行為。改めてお詫びします、申し訳ありません」
「いいって、ありがとなフィア」
フィアの頭を撫でると、フィアはそのまま浮上していった。それに続くようにショウも水面に顔を出した。
「赤いのぅ。今年は」
閃光はとうに消えていた。双眼鏡で見る前にノロからのネタバレをくらうショウだった。
「おお!赤くなってるなほんとに。スゴいな。おおー!」
先ほどまでは緑色だった。それはエメラルドのように淡く気泡の入った角が今や赤に姿を変えていた。ルビーのように真紅の色を輝かせていた。
「きれいございますね、自然の姿というものは。あるべき場所にあってこそ本物の輝きを見せてくれます」
ロマンチックなことをいうフィアは裸眼。
「お前見えるの?」
「見えておりますよ。嘘を言いまして何になりましょうか?」
まじまじとショウを見つめるフィアの目に曇りがないことにショウは妙な納得感があった。
「私のことなどどうでもいいのです。リーエ様が呼んでますので行きましょうか」
いつの間にやら起きていたリーエは手を振ってこちらを呼んでいた。
「赤です!赤!ご覧になりましたか?あの変化する瞬間というものを!!私としましたは赤というのは情熱を意味していると考えております。つまりなにが言いたいかと申しますと……」
川辺に上がるとリーエがたたみこんできた。いつの間にやらはもう一つ。リーエのご主人様にショウはなっていた。
「お姉さまへの情熱というものはご主人様よりあるということですっ!それを今からお見せしたいと思うのですがいかがでしょうか?」
「……なにやら騒がしい事が起こっていますね」
「うわぁ~んお姉さま無視しないでくださいよ~」
ポカポカ殴るリーエをなだめながらフィアはそんなことを言ってきた。
ショウはフィアの向いた方角を見た。黒い影は確実に大きさを増し、地鳴りと土埃をまき散らせながらショウ達に襲いかかってきているように見えた。
赤く光り輝く宝石を身につけて……。




